(そおっと ひゆるりらゝ
今は ひゆるりらゝ)
窓から吹き込んできた さざ波でその栞
ひらゝゝ床に落として ページを探している
この短い季節と同じ
常しえの幸福は無いのだけれど
きっと今だけは愛しているままでいたい
すうっと ひゆるりらゝ
辷る ひゆるりらゝ
黄金の木の葉 ふと舞って
二人のすき間 すり抜ける
暮れる ひゆるりらゝ
紅く ひゆるりらゝ
儚い空もまた巡り来る
暦を周って 風が尽きるまで
しとゝゝ秋雨でさえ 騒々しい一時
金木犀満ちるような日々
何時迄でも続けばいいのだけれど
きっと今だけは愛しているままでいたい
ざあっと ひゆるりらゝ
葉擦る ひゆるりらゝ
躍った歩幅 揃えたら
木漏れ日くぐる 結いた手
秋は ひゆるりらゝ
刹那 ひゆるりらゝ
足跡 ふたつ並んで続く
轍は遥かに 風の終わるまで
風の行く方へ
あゝ
凩の合図で 季節が散っても
咲くのは待てるさ 一人じゃなきゃ
ふうっと ひゆるりらゝ
息が ひゆるりらゝ
物言えば唇寒いから
言葉はいらない
ずうっと ひゆるりらゝ
亙る ひゆるりらゝ
飛行機雲が碧と蒼
隔てに路が架かるように
揺れる ひゆるりらゝ
紅葉 ひゆるりらゝ
呉藍の中 霞んで飛んだ
二つの蜻蛉のように 風が止まるまで
(そおっと ひゆるりらゝ
今は ひゆるりらゝ)
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