kittone

  • 長い夢 – kittone

    長い夜の隙間を揺れてただ夢を見ていたまるで春を告げる花のようにまたどこかで逢える気がしていた 閉じた目を照らす月明かり 心を一つ歌って そっと風に乗ってまだ白い空を渡った君を描いているいくつも季節を迎えてやっと辿り着くその行く先なら君が知ってる 薄い紙の上に並ぶその指先に宿っていたそれは夜に浮かぶ月のような美しさで横たわっている 記憶の至る場所で溢れたインクのように君が深く滲んで今も胸に息づくまだ…

  • 名前を呼んで – kittone

    一つ声を聞いた、それだけで季節が色づきはじめたような気がしてやがて咲く薄紅より先に私を染めてしまったの気づいていないでしょう 私が嵐なら 君はまるで稲妻だ照らして 心を貫いて そばにいて そばにいて 強く手をつないで君となら どこまでもきっと行けそう 行けそうこの夜を駆け出して 私をつかまえて君がつけた名前で呼んで 澄んだ瞳にその眼差しまばたき一つも見逃したくないほどにどんな景色も目に映らないきっ…

  • ある夏の記録 – kittone

    揺れる水面に溶けた薄月浅い眠りに差した波の音 途切れたいくつもの声が生まれて手繰り寄せてはまた消えて泳いだ手を影が染める 描き出した夜空に咲いた光の雨が閉じたこの目から溢れ落ちていく流るるこの涙を何度生まれ変わっても思い出して 浅い眠りを割いた耳鳴り酷く頭が痛む夏の夜に 途切れたいくつもの声を辿ってただ夢中で書き続けたもう二度と戻れないとしても 空になった心に花火の音が注いだ閉じたままの目が捉えた…

  • いつかの君へ – kittone

    窓際に置いた空のままの花瓶が役目を終えたような顔をして外を流れゆく何度目かの季節を見送った 何も言わずに手渡した花束も今考えても柄じゃないよな言葉一つに結べるほど些細なものでも簡単なものとも思いはしないけど きっとドラマみたいに気の利いた再会はないから今だってこの胸には君がいる映画みたいに美しい結末なんてないままこうやって足を止めているんだ 変わらない街のどこにいてもその面影を重ねてしまうばかりで…

  • 誰も知らない – kittone

    夜の隙間を抜け出した空窓を開ければ流れる浅い夏の匂いがする いつかの夜空を照らす光の雨や頬を染め抜く薄紅 散りゆく花弁拾い集めて一つも残さずに書いている薄い足跡を辿る 何度も吐き出して 吐き出して胸も痛いほどに指先で心の行方を探す 言葉よりも透明で美しいものが知りたくて描いた面影浮かぶあの空の青さは僕しか知らない 窓際に並べた笑顔はあの日のままで時間が途絶えたみたいだ想っていても伝える術を持たない…

  • 名前を呼んで – kittone

    一つ声を聞いた、それだけで季節が色づきはじめたような気がしてやがて咲く薄紅より先に私を染めてしまったの気づいていないでしょう 私が嵐なら 君はまるで稲妻だ照らして 心を貫いて そばにいて そばにいて 強く手をつないで君となら どこまでもきっと行けそう 行けそうこの夜を駆け出して 私をつかまえて君がつけた名前で呼んで 澄んだ瞳にその眼差しまばたき一つも見逃したくないほどにどんな景色も目に映らないきっ…

  • 春ノ嵐 – kittone

    通りに咲く薄紅 風揺れる凛とした横顔不朽の名画に惹かれるように視線が他に行き場をなくした 吹き抜けて散らした花が一つ淡い香りを残してそっと頬を撫ぜる 透明な風に乗って 胸を駆け回る君にこの心も奪われそうで前触れなく吹き荒んで眩い光放つ其れは 春を待つ僕の元に巻き起こる 通りに舞う薄紅 水溜まり染め上げた花弁どれだけ考えていてもこの想いが僕を追い越すばかりだ 月に並べた 目蓋の裏側焦がす君熱が胸を叩…

  • 緋密 – kittone

    時計の音が嫌いその笑顔を奪っていく足音帰り支度の背中見送る笑み ドアが閉まる 今日も 暖かさ 愛おしさ嘘じゃないのは知ってるけど「私だけ」 「あなただけ」それは違うじゃん悪い癖ね 嘘で隠すより染め上げてよその赤で もっと綺麗に染まるから涙見せないわ 見たくないでしょう胸の奥 溢れる前に差し伸べてよ飲み込んだ雫で 薄められた緋は恋のような薄紅 ふたりだけの世界線矛盾さえも忘れさせる魔法瓶離れがたい温…

  • 君を詠む – kittone

    さよなら、またねって いつか来るんだって目を逸らしては溜め息傾く陽が照らす 影を長く伸ばした君をただ見ている 出会いは突然でもちょっとありきたりだから映画や小説にはとてもなりそうもない ごめんね こんな時にうまく伝えられないから空白を埋めるように口遊むんだ 君を 空を泳ぐ烏 聞こえた夕方五時を告げる歌今を飾るに相応しい言葉も見つけられないでいる 夕映え 並んだ影がまだ二つ歩き出すのを躊躇った離れて…

  • 群青と走る – kittone

    大きく息を吸って 群青掻きわけて荒れゆく波を蹴って 抗う君を見た ゆらゆら迷いを抱いて 涙も流しただろうそれでも前を向いた眼差し 誰よりも綺麗で そんな姿を見てたよ 大丈夫 僕は知ってるよ何回と打ちのめされても続いていくストーリー ねえ 夜空を走る光が 煌めいて 願いを乗せて僕にとって君のようでさあ はじめよう 遥か遠くの水平線 朱く染まれば僕らもっと強くなって きらきら 波に乗って痛みは厭わない…

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