Cettia

さよなら少年 – Cettia

キスを知らない少年
ママを知らない少年
生え変わらない歯と
葉っぱみたいな服を着て

ああ君はまだそこで
永遠の国で空を飛ぶんだね
風に乗る方法は
全部君が教えてくれた

大人にならないって
なんて素敵だろうって思ってた
ずっと遊んでいられる
なんて素晴らしいことだって

“ふたつめを右へ行って、
そこから、朝をまっすぐ”
きっともう辿り着けない
もう君には会えない

楽しいことがだいすきで
少し泣き虫だったね
横顔が眩しかった
「僕は大人になりたくないんだ」

ああわたしは
君の知らないことを
たくさん知っていくんだろう
お酒の飲み方、タバコの匂い
綺麗なだけじゃない世界も

ギラギラ光るかぎづめ
はらはら舞う妖精の粉
人魚の住む湖
遠い昔の冒険

でも空はもう飛べない
わたしは全部覚えてるのに
夢みたいな世界は
どんどん遠ざかってしまった

“ふたつめを右へ行って、
そこから、朝をまっすぐ”
きっともう辿り着けない
でも君に会いたい

記憶はあてになんてならない
今だけ子供に戻して欲しい
痛みが走ったその瞳
「どうして大きくなっちゃったの?」

ああわたしは
君の知らないことを
たくさん知ってしまったよ
本音と建前、理想と現実
楽しいことばかりじゃないの

ずっと待っていた
このベランダで君が現れるのを
でも君はもう来なかった
わたしを忘れてしまったの

ああ世界は
知らないことで溢れてる
大人になって会えなくなっても

まっすぐで生意気で勇敢な君がすきだよ
今でもすきだよ

キスを知らない少年
ママを知らない少年
またいつかどこかで
会えますように

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