binaria
信号機 – binaria
うしろを振り返らずに飛び出したけど
離れてしまった影はどこへ消えたの?
暗い道にはまばたきする信号機が
「迷子の影のお知らせです。」
澄ました声でアナウンス
崩れた遠近感の夜の街には
近くて遠いあの人
追いかけてたら
足元、飲み込むような
深い黒に溶ける声 身体ごと
「迷子の影のお知らせです。」
あの信号機は探している
わたしの影のことなのか
わたしが影の影なのか
うしろを振り返らずに飛び出したけど
離れてしまった影はどこへ消えたの?
暗い道にはまばたきする信号機が
「迷子の影のお知らせです。」
澄ました声でアナウンス
崩れた遠近感の夜の街には
近くて遠いあの人
追いかけてたら
足元、飲み込むような
深い黒に溶ける声 身体ごと
「迷子の影のお知らせです。」
あの信号機は探している
わたしの影のことなのか
わたしが影の影なのか
動き出す 身体の奥には生まれたての螺旋が騒ぐ ほらあじけない つまらない 世界の端見下ろすあなたはだれ?目の前 捲られていくの 触れられない未来(触れられないな
かつての名を刻む錆びた鉄のドアを透明な人たちがうつむき潜るひそかな唇の形を読みあえばわずかなグラス音 小さな合図いまは もうない ぼくらの在り処奪われたその名を
ああ 永遠に続くかのようなひとりを抱えてああ 柔らかな水音に沈んで行くモノローグ いま君の住む街では昨日からの雨で冷え込み季節も景色も一足先に冬に変わるでもフリ
わずかに残った時間を早送り美しいままに終わればいいってさ飾られた絵画のよう静かに境界をキープして一枚、二枚 壁隔て触れない距離がね 心地よくて冷たい指に触れてみ
やぶれた頁をつなぎ合わせて余白ばかりのこの胸にひとつ ふたつ あつめ空たかく錆びた記憶の先へ行ける