高村典子

愛愁路 – 高村典子

ひとりですかと 訊かれてほろり
ここはふたりの 別れ宿
酔って甘えた 寄せ書きの
古い思い出 目でなでりゃ
肩が淋しい 小室山

他の誰にも あげたくないと
誓い交した 唇も
逢えぬ月日の せつなさに
負けて涙の 城ヶ崎
伊豆の夜風が 袖しぼる

たとえ荒浪 枕にしても
添い寝かもめは しあわせね
せめて空似の 人でよい
揃い浴衣の 片袖で
涙ふきたい 伊豆の夜

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あなた船 – 高村典子

船のばかばか 船のばかあのひと連れてく 船のばか恋に嘘など ないけれど駄目になります 離れて暮らしゃ涙でサヨナラ 言えないわ行かないで行かないで出船よ行かないで

とめどなく – 高村典子

逢えばどうなる わけもないあなたさがして 伊豆の旅秋の修善寺 しぐれの天城もうあきらめて 思いだすまいといくら こらえてもあなた あなたとめどなくみれんほとばし

螢火海峡 – 高村典子

私と海と どっちが大事無理を承知の 尋ねごとあなた あなた 行かないで女ごころの 未練火が螢となって 船を追うホー ホー 螢火海峡テープと同じ 港の恋は汽笛ひと

夕焼け列車 – 高村典子

夕焼け列車の 笛の音きけばョー駅までかけてく たんぼ道出稼ぎ暮らしの ふもとの村は父さん待ってる 家ばかりああ かみなりが鳴る 遠い日に別れて今は すすきが風に

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