高峰三枝子
湖畔の宿 – 高峰三枝子
山の淋しい湖に
ひとり来たのも悲しい心
胸の痛みにたえかねて
昨日の夢と焚き捨てる
古い手紙のうすけむり
水にたそがれせまる頃
岸の林を静かにゆけば
雲は流れてむらさきの
薄きすみれにほろほろと
いつか涙の陽がおちる
ランプ引きよせふるさとへ
書いて又消す湖畔の便り
旅の心のつれづれに
ひとり占うトランプの
青いクィーンの寂しさよ
山の淋しい湖に
ひとり来たのも悲しい心
胸の痛みにたえかねて
昨日の夢と焚き捨てる
古い手紙のうすけむり
水にたそがれせまる頃
岸の林を静かにゆけば
雲は流れてむらさきの
薄きすみれにほろほろと
いつか涙の陽がおちる
ランプ引きよせふるさとへ
書いて又消す湖畔の便り
旅の心のつれづれに
ひとり占うトランプの
青いクィーンの寂しさよ
嘆きの空の 夕焼けはばらの花より なお紅いもやせ情熱歌えよ ルムバ想い出の 花びらを今宵散らそよどこへ行くのか あの船のなびく煙も 南風ならせ リズムをはやせよ
森の青葉の 蔭に来てなぜに寂しく あふるる涙想い切なく 母の名呼べば小鳥答えぬ 亡き母恋し君もわたしも みなし子の二人よりそい 竜胆摘めど誰に捧げん 花束花輪谺
待てど暮らせど 来ぬ人を宵待草の やるせなさ今宵は月も 出ぬそうな暮れて河原に 星一つ宵待草の 花が散る更けては風も 泣くそうな
虹の七色 消えたとてせめて紅色 ひといろは燃ゆる心の 奥ふかく秘めてひそめて 思い出にあゝ ひとふしの ブルースに心みだるる この夕べどうせこの世は 流れもの思
貴方なしでは さみしくてとても生きては 行けないの泣き泣き今日も 筆をとるだけど だけどなんにも書けない わたしなのいつも冷たい 横顔をじっと見つめる やるせな
ふるさとの風が 心に吹くひるさがりそっと呼んでみたくなる おかあさんあの雲のむこうに 青空があるように悲しみのむこうにいつもやさしいほほえみがおかあさんの おか
古い日記の 頁には涙のあとも そのままにかえらぬ夢の なつかしく頬すり寄せる わびしさよああ なつかしの ブルースは涙にぬれて うたう唄ひとつ浮き雲 夜の空なぜ
別れの言葉は 小雨の花か『さようなら』と 濡れて散るあつい情に 泣いたあの夜もはかない ひと夜のつゆかあふるる涙に 夜空がうつる『さようなら』と 流れ星恋のアル
ねむの並木を お馬のせなにゆらゆらゆらと花なら赤い カンナの花か散りそで散らぬ 花びら風情隣の村に お嫁入り「おみやげはなあに」「籠のオーム」言葉もたったひとつ
青い空には 希望の雲があそぶ蝶々にゃ 小ちゃな夢がそうして そうしてうたう乙女の 心の中にゃ誰も知らない 可愛いい秘密誰か泣いてる ミモザの花がかわいそうにと