長渕剛

知らんふり – 長渕剛

刃渡り30の出刃包丁 ぬめっと 肝臓をえぐる
くの字に 人がぶっ倒れ アスファルトに 血が 流れた
悲鳴と 痛みと 絶叫が 誰かれかまわず 襲いかかった

血しぶきが 僕の目の前で 知らない少女を かすめた
狂った悪魔のうすら笑い それと とりまく やじうま

白昼 歩行天(ホコテン) ド真ん中
僕は 思わず 身をかがめた

恐怖あおるサイレンが鳴り TV カメラが 走ってきた
『でっかい カメラで 殴ってやれ!』と 思わず 僕は 叫んだ
「俺たちゃ 報道の義務だ!!」と 殺しの現場を 盗撮!!

僕は少女を とっさに 抱きしめて 悪魔めがけて 飛びかかった
振りおろされる 恐怖の前に 奴の目ん玉 突き刺した

怒りと憎しみ こみあげて 僕は悪魔に 噛みついた
悪魔は でたらめに 振りまわす 刃渡り30の出刃包丁

『助けて 誰か 今すぐ!』 『助けて 今すぐ この僕を!』
悲鳴で鼓膜 突き刺しても 誰もかれもが 知らんふり
高みの見物 やじうまさん 知らんふりの やじうまさん

携帯電話 僕に向けて 刺される 僕を撮ってる
何度も 何度も 叫んでも 『助けてくれ!!』と叫んでも
携帯電話 僕に向けて 刺される 僕を撮ってる

刑事も 検事も 弁護士も 何だか さっぱり わからない
僕は刺されたみたいだ あちこち ぬるぬる 血の臭い
やがて 痛みが 込みあげた 切り裂く程の 激痛が

さっきの少女 人の群れに やっと帰って行くのが見えた

悪魔を囲む人の群れは どんどん どんどん 遠ざかる

ダメダメ そっちも 危ないよ 見て見ぬ 知らんふりだらけ
ダメダメ そっちも 危ないよ 見ていて 知らんふりだらけ

そして雨が 街をたたき すべてを 洗い流してくれた
取り残された 僕の死体と 悪魔が一匹 へたり込んでる
かかわりあうのは ごめんだと その場に背を向ける 人の群れ

もしもし そこの おまわりさん 僕は このまま 死ぬのかな
もしもし そこの 知らんふり 僕は このまま 死ぬのかな
もしもし そこの おまわりさん 報道カメラは これでいいの?

ダメダメ ダメダメ 知らんふりをしちゃ
ダメダメ ダメダメ 知らんふりをしちゃ
ダメダメ ダメダメ 君の心には 知らない 悪魔が ほら ひそんでる

もしもし もしもし 見て見ぬ 知らんふり
もしもし もしもし 見ていて 知らんふり
もしもし もしもし 見て見ぬ 知らんふり
もしもし もしもし 見ていて 知らんふり

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