見田村千晴

ペーパードライバー – 見田村千晴

財布の中に眠っている
傷ひとつ無いまま 出番も無いまま
貼られた写真は間抜けな顔で
でもどこか誇らしげな 自分だ

頭ん中で描く手順は
正しく卒なく美しく
出会う人皆 虜にしちゃうのに

半人前のまま 私 ペーパードライバー
教科書通りに出来ないことばっか
堂々巡り気付けば私 独り
君んとこ行けないや このままじゃ
届かない

帰り道の途中やっと見つけた
傷ついた君に かけるべき言葉
いつだってそうだ 間に合わないんだ
「ありがとう」のメールに返す「ごめんね」

行ったり来たりでアピールして
誰かの助けを待つだけの
そんな毎日はもう 捨ててしまわなきゃ

簡単だって言ったじゃない、先生
大きくなるほど出来ないことばっか
清純ぶったあの娘みたいに
ひらひら世渡っていけたなら
いいのに

「等身大の私」という怠惰の正当化
「泣ける歌!」という感動の押し売り
「いつもキレイに使ってくれてありがとう」震える脅迫
疑わしい世界だ この両目を惑わせてみて

講釈垂れるだけ 私 ペーパードライバー
衝動なんて解せないままだ
大事なもの一つ守れたら
胸張っていいですか?

半人前のまま 私 ペーパードライバー
教科書通りにできないことばっか
堂々巡り気付けば私 独り
どこへも行けないや このままじゃ
届かない

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