見田村千晴

もう一度会ってはくれませんか – 見田村千晴

私がここにいるのには一体いくつの理由があって
あなたがここにいないのにはいくつの正しさがありますか
闘わせたら負けてしまうことなんて重々分かっているんだけど
それでも暖かくなってきたし 私も少し綺麗になったし
もう一度会ってはくれませんか

甘やかされて育った私はどこまでも楽観的にできていて
悩みやすいあなたのことを 正直分かりきれないでいます
致命的なミスも七十五日で消えるんじゃないかって
そんなわけはないんだけど
それでも優しくなりたいんです もう少し強くなりたいんです
もう一度会ってはくれませんか

寝そべった夕暮れを
切り裂いて バスはゆく
行き先はどこでもいい
あなたがもういないこと
お願い 今だけ
忘れさせてよ

想像力の欠如 要するに子供だったんでしょう
私の知っているあなたはあなたのうちのほんの一部でしかなく
“知らない”ということに対峙する毎日は
どんどんと色をなくしていくんだけど
それでも写真の中あなたは 優しい緑色のシャツを着て
今日も笑いかけてくれますね

最後に会った日は 嫌味なくらいに晴れていて
あなたとの会話を私 一語一句違わず覚えています
自分でも気持ちが悪いと思うけれど 本当のことなんです
それでもいつか色褪せていくんでしょうか
そんな自分なら殺してしまいたいんです
そうしたらあなたに会えますか

散りばめた街灯を
飲み込んで バスはゆく
ありふれた春が来て
私だけ歳をとる
あなたの「おめでとう」
二度と聞けずに

大切なものはそれを失ってから気付くという
だけど私にはずっと大切だった
全てに意味があるとは思わない 運命が正しいとも思わない
バスが揺れる こぼれた涙はあなたのぬくもり

寝そべった夕暮れを
切り裂いて バスはゆく
行き先はどこでもいい
あなたがもういないこと
今だけ 今だけ
忘れさせてよ

私がここにいるのには一体いくつの理由があって
あなたがここにいないのにはいくつの正しさがありますか

もう一度会ってはくれませんか

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