藍空と月

  • 君と二人で雪を投げた日 – 藍空と月

    目が覚めても君は横に居た 「ねぇ、今日は出掛けよう久し振りにしてみたいんだ、雪合戦を」 「おい、なんか言ってよ」「君らしいなと思って」「あと五分だけ寝たら準備しよ」 惜しい命など無かったんだ君に全部使えるのなら本当なんだ、長いことずっとそう思って生きてきたけど永らえたのならと願った君が喜ぶかなと思ったんだ本当に、もしも、君がそうだとしたら嬉しいのだけれど 「ほら勝負しに行くよ!」目を覚ますと一時間…

  • 落葉 – 藍空と月

    紅葉の散る川に染まる秋が水に降る盗まなくても十分紅いのに この中の誰かは海を見たりするのだろうか欄干に手を掛ける少しだけ冷えていた 紅く成った水を、紅葉の柵を眺めている君を見るまでもなく眺めている 歩けばバス停が見えるベンチに腰掛けて隣の老夫婦は遠くを見ている君はそれを見つめている何かしらを思いながら僕はそれを見つめている何かしらを願いながら 幸せの意味を、全ては終わることを考えることを辞めること…

  • 散るから – 藍空と月

    春が嫌いなんだずっと桜の所為だろう、随分前から嫌いよりも怖いの方が近いだろうか唐突で鮮明なその終わり方がずっと怖くてさ 君が居る今は終わりはしないだろうか君はどうだろう同じだろうか何も考えずただ愛しているだろうか ねぇ、このままを続けていたいよ咲く喜びは二度と知れなくても良いだろうから散るな、何かを終わらせて往くないつか探しに行こう散らない桜を二人で 見えないからこそ終わりばかり見たがって仕舞うの…

  • 夏の夜は – 藍空と月

    「ねぇ、歩こう」「今何時だろう」「判んないけど、多分二時くらい?」 僕ら今日も大分夜更かしさんだねサンダルでいっか、さぁ行こう肺まで色が付いて仕舞いそうな程の月と青い夜 跳ねる足は君と多分夜の所為 こんな夜を忘れはしないよそう思ったことさえきっと僕は忘れないから歩いて、走って、疲れて止まって手を握ってまた歩いて「楽しいね」と呟いた けんけんぱ何も無いのに君は跳ねる僕らは魔法使い白い線の他は全部海に…

  • 雨空の隅に – 藍空と月

    もうきっとこれが最後になると分かっていたバスに揺さぶられ僕ら大分遠くへ来た 雲の落とす影が山肌に映っている川沿いを歩く冷えた高地の空気が頬を撫でる 息を吸う君を見る、物憂げな表情の君を物思うのは僕だけじゃない長い髪が揺れてる目を合わせた君が少し先を歩いた ここが最後の場所だきっと僕ら今さらなんだ、僕は君と生きてたいんだこのままこの遠い遠い場所で雲の影だけを眺めていようよ 川に突き出した岩に登る君を…

  • 空と遊園地 – 藍空と月

    晴れ間ひとつ見えない空も今はどうでも良くてさ君の横顔を盗んだ昼前の遊園地 「雨はきっともう降らないよ」と何も知らない君は言う 「それが本当なら良いけど」「晴れ女だからさ!」「それはそうだね、確かに。」 君がいて僕は朝を見る夜なんて疾うに過去の話だ「回れよ回れ」君の心に一生と咲け落ちる身体に浮く心と漏れる悲鳴は空へ飛んで往く雲を割いて晴れ間ひとつが目に映る 先を歩く君の髪が揺れて大きく広がった君は僕…

  • 夕紅夜を待つ – 藍空と月

    沈んでく日に気が付いてたんだそれでも渡す言葉一つ分からないままで 暮れ色に染まる部屋で描いた一人、君を失う詩を君がいたことをただ確かめるように 君がいた景色を余さず描いて一人、思い出の瀬をなぞってそれでも君は消えて往くんだ何も知らないままで枯れゆく声すら出せないままで君の隣はもう花開いて 僕は、ただ夜を待つばかり 何食わぬ顔で消えないで思い出を目に映るように捨てて往かないで咲く花にだけ想いを馳せれ…

  • 物思い – 藍空と月

    私といる時はいつも携帯ばっかいじってさあの子とデートの時は待てど暮らせど返信はなくて今頃私が教えた公園で 一緒に私の街を見下ろしてるのかな 私があなたと行きたかった場所 あなたと会う時はいつも決まって駅前のファミレスであなたは安いパスタとドリンクバーを頼む氷の無いコーラを片手に戻るあなたに「どうしたの?」と訊かれてしまった 色に出てたかな もう少し忍ばなきゃなだけど全部全部全部あなたのせいなんだよ…

  • 夜想 – 藍空と月

    雲ひとつない空を眺めていたあんたらみたいで吐き気がした心の価値も知らないで幸せそうに笑うなよ、ほんとさぁ 今更になって思ったんだ僕がいなくても世界は廻るそれなのにしがみついて生きてるのが虚しくてさ 音楽は裏切らないから縋り付くように歌を書く幸せになりたくてさ不幸な歌を書いてる 幸せになんてなれるものかもう、分かってたんだ悲しみを受け取る覚悟もないし真っ白なシャツに染み一つ付いたもう捨ててしまおうか…

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