能登麻美子

夕顔 – 能登麻美子

庭に咲き始めた夕顔に
水を打ってあげたら
遊びに出かけていた猫が
帰ってきたわ「おかえり」

ほら見てごらん 雲のさざなみ
杏色やむらさき
沈む夕陽に 染まってキレイ
まるで夢か幻

風は どこから
吹いてくるのでしょう
遠い 海を渡り
長い旅をするの

ふと気がつけば 時計の針は
あの人が戻る時刻
お腹の虫も鳴いてるはずよ
今日は何を作ろう

そら耳かしら 誰かの声が
留守録にメッセージ
今にあの人あわてて言うわ
「夕飯はいらない」と

風は どこまで
吹いてゆくのでしょう
いつか こんな日々も
なつかしくなるの

ぽっかり空いた時間を一人
持て余すベランダに
一番星がまたたき出した
きっと晴れる 明日も

風はゆく どこへ
誰も知らない

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