細川俊之

  • 海辺の画廊 – 細川俊之

    北の海辺の小さな町はあなたが最後に生きた場所愛の座折に耐えられるほど強くはなかったあなたの海辺懐かしさとは哀しいものさ水にとかれて髪は藻になり白いからだにまつわりついた日暮れの海は絵にかける…… 流木をひろいあつめて朽ち果てた船のキャビンにあなたのための画廊を作る風と浪のうたをきき乍らあなたをえがいた絵と一緒にある日砂のまぼろしになりたい。砂のまぼろしに…… 北の海辺をさすらい乍らあなたをしのんで…

  • 少年のころ – 細川俊之

    ああ……雨がふっているなァ。おまえは安らかに眠っている。優しくあたたかいおまえの匂い大丈夫さ……おまえの眠りを妨げはしない。 夜明けが近いのに雨ふりの窓は暗いはるかな昔から雨ふりを生きて来たおふくろ……おれを抱いてごめんねと泣き乍ら言って死んで行った夜明けも雨ふりの……少年のころ いつだって雨の中さいつだって陽かげばかりしずくをたらし乍らものほしげに…… おそらくこのおれは雨ふりの夜の生れつめたい…

  • 少女への手紙 – 細川俊之

    もう逢うことも ないだろうけれどおまえの微笑み なくさないで欲しいあしたおれが いなくなってもおまえの哀しみは すぐに消える枯葉の音をきき 友達に電話をしてわるい夢をみたと 話すがいい…… 少女よ ありがとうこんな男を 愛してくれて優しい心さえ あずけてくれた少女よ ありがとうおまえのそばで 昔に帰り時には涙さえ 流すことも出来た もう逢うことも ないだろうけれどおまえの思い出 なくさないでいるよ…

  • 行きずりの街さすらい通り – 細川俊之

    淋しい旅のワードローブはほつれたシャツの糸くずポケットに両手を入れてにぎわいの日暮れの街へ人が皆ゆたかに見える人が皆まぶしく見えるそれなのに街は底冷えの海だポケットに両手を入れておれはだれの肩も叩かない 今さら誰に追われていてもかくれる気などもうないポケットに両手を入れて酔いどれの日暮れの街へ過ぎた日を水割りにして虚しさをカクテルにして飲んだって街はさすらいの海だポケットに両手を入れておれは何も抱…

  • めざめたら優しい歌を – 細川俊之

    めざめたら 優しいうたをうたっておくれ……柔らかな おまえの胸に耳をあててだまってきいていたいからこのおれが ろくでなしでもうたっておくれ……いい匂いの おまえの胸に口をあてて子供のように 泣いてもいい 幸せは 短いなりにすてきなものさ……束の間の ぬくもる肌の優しさにはすべてを忘れられるからめざめたら 優しいうたをうたっておくれ……何もきかず いつものように甘い声であしたは居ない おれのために …

  • コーヒーハウスの日々 – 細川俊之

    少し前のつかれた日々ぼくはよくあの店でクリスティを読んだりしてた何時間も……だれとも話さないぼくだったがほんとうはだれとでも話してた今よりかはズッと……… あのむすめはどうしたろう結ばれて子供抱いてコーヒーものまなくなっているのかな……何か言いたそうにぼくをみてたあれは風の強い日それっきり季節だけが過ぎた…… もしかしたら青春なんてあの程度かも知れないそれでもいい帰れるならば帰りたい……もう少し陽…

  • 優雅な関係 – 細川俊之

    いい奴に会わせるとあなたが連れて来たあの人とあなたはよく似てる淋しげな横顔で何にも言わないで優しい眼うるませるところなどあなたが旅立ったらあの人が来る私の部屋それでいいのね不確かな愛だけどそれがのぞみならばこの鍵をあの人にわたしてね あの人と私とはおそらく上手に行くこの部屋は行きずりの愛の部屋淋しさを知っている旅の男ならば私にはよく似合うはずだからあなたが旅立ったらあの人が来る私の部屋それでいいの…

  • ともだち – 細川俊之

    寒すぎる季節におわれたあてのない旅先で突然にあいつに逢いたくなった日暮れのともしびのようにはかなくてあたたかいあいつに逢いたくなった逢えるはずもない……あいつに いくつかの季節をくぐって人はみなかわるのか今いづこあいつに逢うこともない迷った野良犬のようにおれさえもさけ乍らあいつは遠くへ行ったわるいうわさだけ……残して 人気の新着歌詞 ほろびの詩 – 細川俊之 ほろびのうたは たとえばこ…

  • れんが色の酒場 – 細川俊之

    この世にバラいろの朝が来るとはとっても思えはしないのにどうして二人は生きているのだろうあきらめた人生には優しい心だけが似合うだろう何も言わずにぼくをみつめてぼくもあなたをみつめているから今夜も二人だけ朝が来るまでルルルル れんが色の酒場 昔はぼくもおしゃべりだった多分あなたもそうだったろう……人生をやりすごすたびに人は静かになって行く だれにも若い日があると言うけどとっくにいのちは燃えつきてどうし…

  • あした君の許へ – 細川俊之

    いつでも君のところへ行けるはずだったのに、ぼくにはまだ勇気がないでも、あしたには 多分……あしたには 眼をとじる 君がみえる君の吐息 感じる眼をあける ひとりだけの部屋も心もからっぽああ……なけなしのあしたを語りあって今は時代がわるいのさとなぐさめあってようやく眠れそれだけの愛だったけれど眼をとじる 君がみえる君がわらう 君が眠る君が沈む 君がくるしむそして……君が死んだ またあした 君に逢おう君…

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