秋組

異邦人 – 秋組

クソったれな世界だ
死にたくなきゃ
「金と食料を渡せ」

「ち…。シケてやがる」

あんた誰? 死神?
死にたいなら一思いにやってやろうか?
俺は死にたがる奴が殺したくなるほど
「嫌いなんでな」
「死にたいなんて言ってない。私は追われてたの」
「だったら立ち上がるんだな。こんな砂漠で寝てたら死ぬぞ」

「ダメ…もう歩けない」
「じゃあ死ね」
「ひどい! 助けてくれてもいいでしょ」
「ガキにかまってる暇なんざねえんだよ」
「お金でしょ。私があんたを雇うわ」
「ほう…」

「臣クンこえ~。目がマジッスよ~」
「悪い。芝居の間だけ我慢してくれ」
「もちろん! 今の臣クン最高にカッコいいもん!」
「褒めるの早すぎだ。もっと上げてくぞ!」
「了解ッス!」

「その娘を渡せ」
「残念。たった今こいつは俺の雇い主になったとこだ」
「そうか。じゃあここで死ね」

「やるな…。こいつは高くつくぞ?」

お前はドム様からは逃げられない…ゼロ
「ゼロ、っつったか。金は持ってんだろうな?」
「…これを見て」

「ガキの裸なんざ興味ねぇぞ」
「ちゃんと見て」

「それは…植物の種か?」
「これのせいで私は追われてる。植物が死に絶えた世界では希少なもの。
売れば大金になると思う」
「ちっ…。とっととしまえ」

「守ってくれるの?」
「金があるなら文句はねえ」
「あなた、名前は?」
「…ヴォルフ」
「ふーん。変な名前」
「てめーに言われたくねえよ」

「あの男は信用できません。ヤツはゼロの…!」
「どの口が言ってる。図体も武器も見掛け倒しか?」

「もっと来い。雄三さんに言われたろ。てめえのいかれっぷり出してみろ」
「こういうことだろ? おらよ!」
「この怒りはヴォルフにぶつける力にする」
「ドMの芝居馬鹿が。臣と太一の芝居、俺らでしっかり盛り上げんぞ!」
「当たり前だ」

マントを返せ
バイク乗るとき寒いからもらっとく
「ふざけるな」
雇い主として命令する
「ヴォルフ、このマントをくれなさい」
俺は人に命令されんのが
「反吐が出るほど嫌いなんだよ」

「ゼロ…見つけたぞ」
「私と同じ首輪…? あなたは?」
「記憶をなくしたか…。ちょうどいい」
「追っ手か? こいつは俺の雇い主だ、近づくな」
「種を渡せ。種は俺が引き受けてやる」
「ざけんな。こいつを渡したら金はどうすんだよ」
「早くしろ。でないと奴らに…」

「ナイン、やはり裏切りか」
「ジョン!」
「だが見つけてくれて感謝する。お前の役目は終了だ」

「おじさん!」
「焦るな。お前も連れてってやる」
「させねえよ」

「種さえ手に入れば殺してもいいんだったか?」

「ゼロ!」
「ヴォルフ!」
「用心棒としては100点。戦士としては0点だな」

お前が種を引き受ける? 失敗作が思い上がるな
種はゼロにしか適合しなかった
「終わりにして始まりの少女…ゼロ」
「あなた達は一体何なの?」
「君は種だ。その命と引き換えに太古の緑を取り戻し、全生命の源となる」
「私の…命と引き換えに?」
「そのために君は作られた。これの遺伝子も使ってな。
さしづめ、ナインはお前の父と言ったところか」
「私は…作られた存在なの?」
「失敗作の被験体は大人しくしていてくれ」
「やめて!」
「以前の8体も皆処分した。
こいつは君を見つけてくるという条件で生かしていたに過ぎない」
「なのにあなたはあの時私を逃がそうと…」
「その感情も種に蝕まれ、やがて朽ちて消えていくさ。
君が完全な種となれば世界中で飢餓に苦しむ者たちも救われる。
君は世界の救世主となるのだ!」
「うるせえよ」

「このクソみたいな世界を救う? クソくらえだな」

「ヴォルフ!」
「ゼロ、行くぞ」
「私、世界のために種になったほうがいいかなあ?」
「あ?」
「私の命で、世界に緑が戻るんだって…」
「バカか。こんな世界、救う価値もない」
「あるよ。この世界にはヴォルフがいる。ヴォルフがいる世界を、
私は救いたいんだ」

「那智って人のこと俺は知らねぇけど、その人がいたからアンタが
舞台にいるなら、俺達はその人に感謝してる」
「十座…そうだな。那智、ありがとう」

「ゼロは私の…人類の希望なんだ。この装置を埋め込めば、種が起動する。
さあ、ゼロ…!」
ゼロを解放しろ
「こいつは俺たちとは違う道が選べる」
…ゼロ お前は、お前のいる世界の中で生きればいいんだ
「自爆? よせ…よせ!」

「伏見、七尾、舞台の上でワガママになるのは役者の特権だ。もっと行け」
「はい。ありがとうございます」
「そうやって結局いいとこ持っていきやがる」
「ほんとにいいとこ持っていくのはこいつらだ」
「だな」

「ゼロ。まだ死にたいか」
「…」
「なら俺が一思いに殺してやる」
「…生きたい。ヴォルフと一緒に」
「だったら立て」
「この状況で助けてくれないわけ?」
「自分で立つなら、雇い主としてお前の命令を聞いてやる」
「命令されるの嫌いじゃなかった?」
「…俺は、死にたがる奴が殺したいほど嫌いなんだよ」
「じゃ死ぬまでこき使ってやる!」

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