石川智晶

逆光 – 石川智晶

放し飼いにされた大海原で
迷ったふりして 右往左往して
どこまでも認めたくないんだよ
もはやヒトではないことを

空に浮く白い鳥 美しいと目を細めても
今宵 クヌギの木の住処へ足を踏み入れる

なんてあさましい奴かと光の前に平伏して
どれだけ謝ればいいんですか
ああ逆光は体を黒く埋めつくす
たぐいなき日々を前にして
マブシクテ マブシクテ

「ここでは何をしてもいいんだよ」
何百回もまじないのように
唱えた先に押し寄せる闇よ
それを「恐れ」というらしい

深海を這っていた 欲のない魚連れてきて
その成れの果て 誰かが今楽しんでるように

デッドポイントはむしろ強くつま弾けと
断崖の端までいっそ微笑んで走る
ああ逆光がシルエット浮かび上がらせる
わびしく怯えているんだよ
マブシクテ マブシクテ

この夜空に満開に咲いた雪の花よ すべてを消して
手を引かれた子供の頃を想い出して動けなくなる

なんてあさましい奴かと光の前に平伏して
どれだけ謝ればいいんですか
ああ逆光は体を黒く埋めつくす
たぐいなき日々を前にして
マブシクテ マブシクテ

ヤミクモニ アザヤカニ
オレハイマ ココニイル
マブシクテ マブシクテ

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