田端義夫

大利根月夜 – 田端義夫

あれを御覧と 指差すかたに
利根の流れを ながれ月
昔 笑うて 眺めた月も
今日は今日は 涙の顔で見る

愚痴じゃなけれど 世が世であれば
殿の招きの 月見酒
男 平手と もてはやされて
今じゃ今じゃ 浮世を三度笠

もとをただせば 侍そだち
腕は自慢の 千葉仕込み
何が不足で 大利根ぐらし
故郷(くに)じゃ故郷(くに)じゃ
妹が待つものを

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旅の終わりに聞く歌は – 田端義夫

夕焼け空に聞く歌は水筒抱えて待つ母の歌あぁ幼い稼ぎじゃ暮らし変わらぬのに涙ぐんで何度もご苦労様と一番風呂の熱さ嬉しさ船の汽笛に聞く歌は無邪気に手を振る妹の歌あぁ

紅しょうがの詩 – 田端義夫

その日ぐらしの 母(おや)と子が今日も夕飯に 紅生姜こんな総菜(おかず)で すまないと涙堪えた 母の顔いまも優しく 目に浮かぶ頼る父には 先立たれ苦労をかかえて

泣くなカァチャン – 田端義夫

腕の時計は コチコチとコチコチとこんな時間と なりました無理に飲ませたいつものあいつが 憎らしい泣くなカアチャンチョイトなァ カアチャン両手合わせる 胸の内両手

ふるさとの舟唄 – 田端義夫

ふる里の 舟唄こいし沖ゆく白帆よ 霞浦(かほ)のわが家よただひとり残る 老いた母の便りひらけば文字もわびしく あゝ一度帰れと 今日もまた呼ぶ枯れ真菰 よしきり啼

ダンディ気質 – 田端義夫

花のキャバレーで 始めて逢(お)うて今宵ゆるした 二人のこころこんな男じゃ なかった俺が胸も灼きつく この思いダンディ気質(かたぎ) 粋なもの唄と踊りの ネオン

波止場ブルース – 田端義夫

男なりゃこそ まともに受ける辛い浮世の向い風あゝ波止場鴉と 笑はヾ笑え熱い血もある 夢もある暗い心に 明るい灯影ともす俺らの 胸の中(うち)あゝ知ってくれるか 

戻り船 – 田端義夫

黒潮に流れて浮かぶ 花びらも俺を迎えの 島椿会えば泣きたい 小島の磯のああ ふる里へ 戻り船船乗りの儚い夢を 追いながら旅に出たのも 若さ故海はさい果ての 氷の

赤い花 – 田端義夫

可愛い坊やが あるさかい負けやしまへん 生きまっせ暮れりゃ梅田の 路地裏に今日も咲きます 赤い花荒いこの世の 波風(なみかぜ)を私一人じゃ どないしょう坊やいる

青みかん – 田端義夫

小雨そぼ降る 夕まぐれまずしき父の 酒買うて帰る小さな ふところにひとつもらいし 青みかん小雨そぶ降る 寒い夜は囲炉裏(いろり)かこんで 餅やいて昔ばなしも な

ふるさとの四季をうたう – 田端義夫

春は菜の花が ゆれていたあの頃の かあさんの笑顔に 会いたいなァ夏は家族して 海へ出たリヤカー引く とうさんの背中は 広かった秋は稲穂にも 赤とんぼ初恋の あの

別れ出船 – 田端義夫

情け知らずの 銅羅の音に泣いて泣かせる 磯千鳥乙女椿も ほろり散る青い月夜の 名残り船肩を抱きよせ ひとしずく胸に涙の しみのあときいてくれるな その先は海の男

ズンドコ節(街の伊達男) – 田端義夫

黒いソフトに マドロスくわえ肩で風切る 小粋な姿伊達にゃきらない 俺らのたんか街の男は 勇み肌トコ ズンドコ ズンドコかわいあの子が 涙のいさめ恋に生きよか 男

嘆きのピエロ – 田端義夫

空の浮雲 嘆きのピエロ風が身に沁む 秋がきた抱いて泣こうか 故郷の夢を想い出せとて あゝ海が鳴る俺もお前も 孤児(みなしご)同志なさけよせ合う 身の上さ白いテン

ひとり旅 – 田端義夫

かりの来る頃 つばめは帰る俺も行きたや 故郷の空へねぐらさだめぬ 身は悲し拗ねた心か 男の意地か俺は淋しい うらぶれ者さ明日は何処(いずこ)の 空の果て風に追わ

宵待船 – 田端義夫

宵待船は むらさきの空に錨を 巻きあげてドラも鳴らさずいづこの果てへ残るあの娘が かなしいかろ宵待船を 呼び止める靄の桟橋 影ひとつ海の男はいつかは海へ恋を捨て

浅間の鴉 – 田端義夫

何が哀しい 浅間の鴉雲の行方が 気がかりか憶いだすなよ 昨夜の風に枯れた尾花が 咲くじゃなし道はひとすじ けむりは三すじ影は沓掛 時次郎男泣かせの 弓張り月に背

ゴンドラの唄 – 田端義夫

いのち短し 恋せよ乙女紅き唇 あせぬ間に熱き血潮の 冷えぬ間に明日の月日は ないものをいのち短し 恋せよ乙女いざ手をとりて かの舟にいざ燃ゆる頬を 君が頬にここ

バタやんのツキツキぶし – 田端義夫

娘さん 惚れるならツイた男に 惚れなされ惚れて一生 寝て暮らせ俺は天下の ツキ男ツキツキ男 ツキ男娘さん 賭けるならツカぬ男に 賭けなされ風の吹きよじゃ ビルが

骨のうたう – 田端義夫

戦死やあわれ兵隊の死ぬるや あわれ遠い他国で ひょんと死ぬるやだまって だれもいないところでひょんと死ぬるやふるさとの風やこいびとの眼やひょんと消ゆるや国のため

浜千鳥 – 田端義夫

青い月夜の 浜辺には親をさがして 鳴く鳥が波の国から 生まれ出る濡れた翼の 銀の色夜鳴く鳥の 悲しさは親をたずねて 海越えて月夜の国へ 消えて行く銀の翼の 浜千

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