田村芽実

  • 空に飛ばす手紙 – 田村芽実

    これだけ雨が続いたらまた進化が起きないかな足の生えた魚 翼生えた馬翼生えたわたし わたしの背中に 翼が生えたならこの窓を開け放って 隣町まで会いにいく 変わっていく世界 新しい世界 進化する世界をこの目で見たかった 拝啓 怪盗ルパン様お元気じゃないですよね初めて手紙を書きますわたしの事知らなかったでしょ あなたに会いたいけど 会えないみたいです翼持ってないから 空は飛べないみたい誰か運んでくれたら…

  • 誓約 – 田村芽実

    涸れてゆく井戸の奥に満ち足りた月の破片(かけら)それはあなた身を投げて叶うものを人はなぜ躊躇(ためら)うのか 愛だと言うのにどこにも たどり着けないで夢見るしかない心を巡るだけで 時のせいで醜くなって私が冷たくなっても抱いていてね 手にしても喉は渇く幸せは無垢な荊(いばら)嘘も好きよくちづけで奪えるのはさびしさのすべてじゃない 愛だと言うなら誰とも 口をきかないで流れているのはおんなじ赤い血でしょ…

  • 闇夜だけこんばんわ – 田村芽実

    昨日見た月よりも またやせてやがては消えそうな 心細さも二人の出会いには うれしいことばかり闇夜だけこんばんわ 逢いたい あなたに 逢いたい私はユーレイ都会のさびしいひとに愛を教えるの 愛しても 少しも 愛されないココロがズタズタになったひとにもやさしいてのひらを 激しいくちづけを闇夜だけこんばんわ 抱きたい あなたを 抱きたい私はユーレイひと花さかせるまではここにいてあげる また月が出る頃 お別…

  • ユリシス – 田村芽実

    蝶々 ゆらゆらと揺れる飛び立って 湖の辺り(ほとり)へときっと わたしを誘っているのね 遠くで ディングドン 稲妻が笑うねぇ、もっと 言いたいことがあるの?森の向こうへと 続く道開くの あぁ 逃れられない強い魔法が 呪縛が 私を揺さぶるのあぁ 胸の奥で 声にならない 秘密を 祈りを 叫ぶ きっと 見つめられているそう ずっと あの森の向こうにはシークレット 昔からそこにあることは知っている ふわり…

  • 毎日女の子 – 田村芽実

    昨日の私は今日の私じゃなく今日の私は明日の私じゃないメソッドなんて通用しないわ即興力が試されてるのよ昨日の嫌いは今日の好き今日は好きだけど明日は嫌いよ 可愛い 綺麗 優しい 怖い嬉しい 楽しい めんどくさいどこにも同じ私はいない毎日が新しい女の子 着飾るみたいに女の子はね毎日似合う 景色が違う だからほら毎日違う 全然違う 私なの 甘やかさないで なんで厳しく言うの仕事やめたい仕事楽しい大好き日替…

  • わたしたちの冤罪 – 田村芽実

    よこしまな目が手負いの傷を撫でて戒めに他人は錆びた錠を掛ける 命辛々非情の雨をかわし無残な屍にならないようにね 最果てまで 逃げましょうか平凡なんて 虫唾が走る 嗚呼 好きになっただけそれを咎めるなら生まれたまんまの姿で濡れ衣も着るわ 明け透けにする魔性の接吻もしたい無法地帯ならばそうね 望むところ 見返りなど 求めません失うくらい 全部をあげる 嗚呼 好きになっただけ真実はひとつきりこの恋 成就…

  • 肌という嘘 – 田村芽実

    ひい ふう みい よ いつ む なな指折り数えれば ほら 両の手では足りないほど私が溢れてしまう駄目よ取り合えずほら 誰にもバレないうちに心 閉ざしてしまうのよ 曝かれぬように ぼんやりと寂しくてなにも満たされないまま 空元気を振り翳してただ ゆらりとゆらりと揺れるの この肌の嘘を見破ることなんて叶うはずないでもいつの日にかこの嘘を解き明かしてくれるなら秘めやかな思惑をそっとあなたには教えてあげる…

  • 不完全ism – 田村芽実

    未完成の魅力自信過剰も少々くちびるには磁石くっついちゃってね 無理に盛らない make右往左往も gameおもてなしは上手肝心なんでしょ あゝ 歳のわり それなり矛盾の 言いなり世界は 所詮 玉虫色で いまどきあり? いまさらなし?そうよ そうよ そうよわたしの主義は 不完全 意外性の魔力希少価値です結構抱きしめれば案外グッときちゃって お伽話も快感絶滅危惧の青年幸せなら頂戴くせになるまで あゝ …

  • いちじく – 田村芽実

    綺麗な薔薇には棘があるから惹かれるのよ”っていつもママが言ってた 好きなのに好きと言えない心に秘めちゃう私は花のない無花果(いちじく)ね 名前さえ ないかすかな気持ちそっと ひとつずつ育ててあげたいの 花束なんかにならない私らしく 咲かせる蕾(つぼみ)甘い香りも 忘れないわだから 優しく触れて可憐なだけじゃ 飽きるでしょ?弱さやニガさも 添えるからあなただけに 魅せたい果実咲かせる “わたしだけの…

  • 舞台 – 田村芽実

    彼方の水平線から 遊火が らんらんと近くなってゆく意識の境界線から 白波が さんさんと砂になってゆく 幕があがったなら 満ち潮が割れて 一息でのまれるわ海の真ん中で出会いましょう あなたとわたし たったひとつになるのよ狂おしい愛おしい きつく抱きあってあなたとわたし たったひとりになるのよ確かに見ていて 深く突き刺すわ ひそやかな別れの嘘に 優しいだけの 花言葉を贈りたい 恐れを見せれば 人を嗅ぎ…

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