生駒尚子

父娘のれん – 生駒尚子

雪になりそな 夜やから
暖簾をおろして 父娘(おやこ)で 呑もか
添えぬお人に 惚れぬいて
意地を通した 親不孝
口にだせない 詫びがわり
お酒 注ぎたす カウンター

四十代(しじゅう)なかばで この俺を
残していったと ため息ついて
お酒 はいれば 母さんの
思い出ばかりや そればかり
外は小雪か 夜も更けて
親の惚気(のろけ)に 目がうるむ

梅も凍える 如月(きさらぎ)に
灯りがこぼれる 裏街通り
酔って眠った父さんに
赤いコートを 着せかけりゃ
ほっとしたよな 母さんの
写真相手に 手酌酒

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可愛いおんな – 生駒尚子

命がけやねん 何にもいらへん捨てたらいやや あんた指輪をはずして 男に渡すこりない かおるの 貢ぎ癖夢を見て 夢を見て 泣いたけど誰にも迷惑かけてへん唇 かんだ

アジサイの花 – 生駒尚子

アジサイの花が 雨に濡れてる私の心に 蘇るのは幼い思い出 懐かしい日々黄色いパラソル 父の温もりいつもの坂道 学校帰り大きな背中に しがみついてたあの日見た夢は

天雅の海へ – 生駒尚子

水面に輝く 満天の星あれは大漁の 道しるべ掛け声揃えて 若い衆がヤーレン宝の 網を引く陸(おか)で待ってる あいつの為に俺の笑顔を 見せる為海よ、海よ荒れるな 

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