生稲晃子

忘れたいのに – 生稲晃子

いつか逢えなくなる日が
来ると思った
暖かいまなざしに
包まれた時

通りすがりの庭先
香るモクセイ
打水の音の中
寄りそって見上げた

茜色の花の雫が
何も言わず 髪を濡らした

夕映えに 抱かれながら
先にさよなら告げた
貴方から「ごめん」なんて
言ってほしくはないから

離れたら 続かないと
そっと瞳を閉じた
強がりな 私だけど
いつか淋しくなるから
しかたないね 笑ったあの日

誰も知らない涙を
時が消しても
少しだけ 優しさに
甘えたい夜なの

萄色の霧のとばりが
飾り窓を 越えて こぼれる

夕映えに 抱かれながら
二人話した夢を
なつかしく思うくらい
別の私になりたい

思い出の中につもる
蒼い時間のかけら
泣いただけ 強くなれる
それは嘘ではないけど
壊れそうな 心ひとひら

夕映えに 抱かれながら
二人話した夢を
なつかしく思うくらい
別の私になりたい

思い出の中につもる
蒼い時間のかけら
輝きが色あせても
悲しみは消えないのね
みんな みんな 忘れたいのに

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