火野正平

恋人たちのざわめき – 火野正平

雨上がりの空は うすむらさき色した
夕映えをはこんで 人の波 染める

この街に溢れる数えきれない愛
失くしても生まれる 永遠求めて

駅へ行く人の流れの中に
懐かしいあなたに似た面影
思い出はなぜ胸をくすぐるの?
恋人たちのざわめきの中

暮れ始めた空は 一人歩くのもいい
ちぎれた雲が行く はぐれないように

あの頃へ戻れるドアはもういらない
新しい私を探しに行くから

すれ違う人の肩をかすめて
懐かしい声 聞こえた気がした
立ち止まりふと振り向いてしまう
忘れたはずのざわめきなのに

美しい景色を人は忘れ去れない
思い出を旅して流れて行くから

夕やみにいつしか急ぎ足で
それぞれの愛ささやき始める
懐かしいあなたの匂いがした
恋人たちのざわめきの中

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