深居優治

  • 再構築 – 深居優治

    空白に染められた空を時計の針が泳いでゆく。空白に満たされた空を病的な雲が全部食べてしまった。 空っぽだ。空っぽだ、空っぽだと嘆くうちは未だに空っぽという存在に満たされているということにも気付けない空虚な日々です。嘘が入り込む隙間もないくらい本当が敷き詰められていればあなたを探す必要なんてどこにもなかった。それなのにどうして?おかしい、全部おかしい。 バケツから溢れ出した水のように漂い移ろう世界の真…

  • 呼吸の綾 – 深居優治

    『僕は間違えてしまった。』『私は間違えてしまった。』 世界を薄めている言葉にもなれないなら吸って吐いてを繰り返す機械ならよかったな。ねぇ、繰り返すことも上手く出来なくなったから呼吸を止めた。 深く沈んでゆく魚のようにこの世界に馴染んでゆく。 掛け違えた呼吸の数を数えてみた意味を失くした言葉の抜け殻がまた私だけの世界を大きくする。私の音を聴いて。 いつかこの世界は私のことを飲み込んで溶かしてしまうで…

  • アオ – 深居優治

    『優しくなりますように。』僕は生まれた時から嘘の塊みたいだな。もういいよ、もういいよ。誰かが望むイメージ。そんな僕にはなれないし、僕が思い描いた僕に明日もまた笑われるんだ。 眠りに就く。そのまま消えてゆくような気がしてまた青い部屋で目覚めるだけ。 外は深い青順番待ちしているのが朝か夜かもわからないから時計の針を追い掛けて。今日の分の笑顔を作って嫌われないような服と靴取り繕う為の言葉を持って『これが…

  • 水の記憶 – 深居優治

    待ってる間に景色は沈んでゆく。呼吸の仕方を忘れて私は彼を作った。 私が居るのは水の中。押し流されてから気付いたの。遠くに消えて見えなくなっても私は形を変えてどこにでも居る。全て憶えていて欲しい。 悲しむ暇もなく沢山を見送って夜が来て、目を閉じた分だけ千切れてゆくの。今日のことも忘れてしまうかな。 彼の作った青い世界で夜に溺れた僕も。朝を積み上げた私も明日には消えてしまうかもしれないでしょう? 吸い…

  • 空洞 – 深居優治

    明日の夢を見ない夜は水滴が落ちる音がして私は枯れてゆく言葉の繭に火を点けた。 誰も居ない場所で響く、束ねた空洞の音。本当は強く、強くなりたかったの。 人気の新着歌詞 君という雨 – 深居優治 君が壊した世界だ。雨音、ポツリポツリ、今日も傘と歌う。『僕が居ない』と思うこの心は誰のもの?君が居ないとこの身体は傘の中で消える。何から話そうか。自分一人を守る 水槽の脳 – 深居優治…

  • 相対温度 – 深居優治

    『君さえ居れば、それでいいよ』と誤解してたの、僕が僕に出会うまで。 何度目の春ですか?何度繰り返してもぬくもり感じるのはやたら長い冬を越えるから。何度目の冬ですか?それでも震えてるのは僕の中の温度がいつまでも一人分だから。 そんな単純なことにも気付けなかった僕が 『君さえ居れば、怖くないよ』と怯えてたのは君が離れること。君と僕で『二人』だったのに君が消えたら僕は『一人』ですらない、足りない。 隣り…

  • 白痴 – 深居優治

    彼の名前を憶えているのは僕だけどこにも居なくなってから彼の物語は始まった。 綺麗な物語ばかりを見過ぎて薄れてゆくものと、消えないものの両方に手を引かれて宙に浮く。 彼はまた少しずつ、忘れてしまうのかな。切り取った風景の中、笑うあなたのにおいも思い出せないの。 汚いものばかり嫌いなものばかり増えてゆく。急に手を離されてどこまでも落ちてゆく。私はどこに居るの?いつの間にか消えてしまうの? 彼は彼のこと…

  • 雨降りのアポリア – 深居優治

    俄か雨をカーテンで隠して柔らかな緑とコーヒーの匂い砂糖を入れ過ぎたぬるい空間優しい嘘を鳥が啄ばんでいた。 最後に言った言葉は『もう、居なくなるね。』『もう、居ないのと同じだよ。』氷のような皮肉と繰り返す情景。同じところを行ったり来たり。 満たしてしまえばさ水を注ぎ過ぎたバケツみたいに少しずつ入れ替わって透明な記憶に変わるの。今はまだ濁って、あたたかい。 巡り巡って、過去色になったあなたをバラバラに…

  • 虚構の朝 – 深居優治

    昨日と違う生活それは大きく見れば同じ繰り返し。明日も同じ心それは近くで見れば赤の他人。 目を閉じるようにあなたは居なくなって、耳を塞ぐように、世界は知らないものに変わった。すり替わっただけ。 全てが作り話ならいいのに。誰かの創作の物語の冴えない主人公。特別なことなんて何もなかった、あなたが居たことも、死んでゆくことも、夜と朝が繋ぐただの生活。 全てのことに意味は無い。それはつまり、全てのことに意味…

  • 漂泊の殻 – 深居優治

    不完全な彼の物語は不完全なまま終ろうとした。 気付いてしまった。僕の中で僕を叩くのは僕でしかなくて。誰かのせいにするのは、一人じゃ心細いから。 不安を象って、壊してしまえたら良かったな。形が無いから、僕には壊せなかったの。 忘れてしまった、帰り方を。行き先も告げて無いから、迎えも来ないな。誰のせいにも出来なくなったのは、あなたの事さえ思い出せないから。 苦しいのは最初のうちだけ。本当は、空気が無く…

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