浅葱

  • アサギマダラ – 浅葱

    木染月(こぞめつき)の頃 母も知らぬ身となりけり 生まれ立(だ)ち鬼女蘭(きじょらん)食らひて小さき童(わらは)は夢路を辿る 冬ながら春を思ひ遣(や)る 御祖(みおや)舞ひし碧落(へきらく)心に任せて 旅立つ 群(むら)めかす胡蝶 帰らぬ道 忘らゆましじ雲の彼方(あなた)を見渡せば花も風もいとあはれなり然(しか)るに夢見騒がし 蜘蛛の網(い)の如き罠に掛かりけり 纏(まつ)はる物狂ひ馨しき紫蘭(し…

  • 大豺嶽~月夜に吠ゆ~ – 浅葱

    秋方(あきつがた) 心清し山人(やまうど)は獣拾ひて養ひけり ベうベう手負ひの豺は萱草山(かやぐさやま)にて行き離る 夜いたう更けてなむ皆人静まりて後(のち)に鶏(かけ)襲はるる ベうべう主(ぬし)は抱(むだ)き守るも無き事にて誅せられし時 忝(かたじけな)き心 響きけり なおし我は世人の程思ひ知らる涙の零るるに止(とど)まらず 君の声(と)を聞き咎む虚空なり 終はりゆゑ 死ぬる者の様貌(さまかた…

  • 月界の御子 – 浅葱

    我 月界の御子なり 望月の夜 飛車に乗りて参らむ御簾(みす)より覗くは聞き愛づる不死の山 徒(いたずら)に流るる時 月の都を出で立ち 巡り逢ふ秋闌(た)けて燃ゆる心 然すれば涙なりけり 思い焦がれ 百夜(ももよ)通いは君がため一代(いちだい)に一度(ひとたび) 花咲かせたり恋文(ふみ)を交わし いつか契りを結ぶ 夢路に舞ふ萩かな 宵うち過ぎて戦雲垂れ込めたりかの空より月の迎へ参(まう)で来る あま…

  • 畏き海へ帰りゃんせ – 浅葱

    今宵の海は赤かろう饑(ひだる)し我が子が父(てて)喰らふ畏き海へ帰りゃんせ畏き海へ帰りゃんせ 沖へと小舟を漕ぐ 水面にし垂るる糸 逸らしつる魚(いを) 海境(うなさか)の森と御殿を領(し)ろしめす岩場で添ひ居る夫婦(めおと)の影は夕凪を誘ひけり 我が身を削ぎて命を与へ ながながし日を明かし暮らすと誓ひつる やがて いつくしき女は孕み給へり 暇(いとま)申して故郷へ しばしの別れを難(かた)みす然り…

  • 妖刀玉兎 – 浅葱

    月の御殿(みあらか)に蔵(きす)める宝は二つなき妖刀玉兎なり 我が心焼く青し星 如何ならむ いみじと思へばこそ玉兎を持ちて一事(ひとこと)も見洩らさじと護(まぼ)り給ふ 千々(ちぢ)の星此れに対(むか)はめや 昂も夕星(ゆうつづ)も共にこそ霞め 人気の新着歌詞 雲の通ひ路 – 浅葱 上がりたる世 降らぬ天水(あまつみづ)人はおかみに乞ひたるに淡海より現れ給ひて 巌(いはお)破る瑞山の裾…

  • 物の怪草子 – 浅葱

    誰(た)そ彼時(かれどき)より蠢(をごめ)き初む妖(あやかし)百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)に逢ひぬれば命堪へず おどろおどろしや 日に異(け)に月影増せば我が眼(まなこ)はいと神妙(しんべう)なり 見えぬ化生を見顕(みあらは)せば忽(たちま)ちに叢(むら)は押し掛くるわうじゃくたる敵(かたき)末(すゑ)は更なりいで来たれ 其れ其れ 見参せむ 咲きすさびたる待宵草(まつよひぐさ)よ 共に月夜見(つく…

  • 螢火 – 浅葱

    吹き澄ましたる幽玄の横笛は夜さりに鳴り響(とよ)む稚(いとけな)き様 鋭(すすど)し牛若は太刀を構へたり 弁慶よ 千の太刀奪(ば)ひ取ること叶わんや 巡り会ひける縁(えに) 後の世まで語り継がるる名を上げ果(おほ)せつるものならば懸命に生く我が代を悔いず 時は流れて草木も靡(なび)くほど心太く生(お)ひ行く憤(いきどお)り止まぬ兄(このかみ)は我に悋気(りんき)し遣らひけり 燿(かがよ)ふ夢がまし…

  • 白面金毛九尾の狐火玉 – 浅葱

    山のへに狐火玉 照(と)れば華やかに嬉しげなる玉女いざ給へ 小夜中に宴(えん)す 今宵 来たる客人(まろうど)誰(た)そ 歌へ 踊れ 酒を酌め こうこう黄金(こがね)銀(しろがね)花を遣(や)る こうこうさやげ 遊べ 相語らへ こうこうこの世にし楽しくあれ こうこう 此方彼方 睫読(まつげよ)まる 見顕(みあらは)す生けながら作りて食はむ其れかあらぬか 気恐ろしやそれ こうこうこう それ こうこう…

  • 隠桜 – 浅葱

    此処や何処(いどこ) 我は誰(た)そ 寒しや雨もよに佇み歩(あり)く 為(せ)む方無し 何も思ひ出でず ただ咲き出たる花 懐かし 然れど心に背き 血はこの身に染み着く 太刀を抜きて打ちければ折々に消え入る 我が空蝉の性はよもや返るまい 落ち失する勢をも逃すべき様無し 誰(たれ)も止(とど)みかねつも 隠桜(おぬざくら) 花笑みの至りて狂(きょう)せるか 笑はば笑へ いで恋衣(こいごろも) 魂(たま…

  • 冬椿~白妙の化人~ – 浅葱

    春やは遠き 夜半の徒路(かちじ) 降り積む雪は深々と染む 行方も知らぬただ身すがらの私めを 夫(つま)は娶りて暮らしつ 咲き撓(おお)る冬椿(はな) 限りなき美山流離(さすらい)の果てに野墓を見つけたり 世は飢渇(けかつ)して難に遭へり よき里人の嘆きなせり よろづの山賊(やまだら)は押し掛かる惨(むご)らしき有様 こそろと憤(ふつく)む 亡き数読めど いかがは悲しき帰らぬ人らは誰(たれ)もあへし…

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