武田理沙

  • HEADSHOT – 武田理沙

    いつか見た前世の回転体無形の偶像に翻弄され破滅を受け容れた歪みと化し神をも冒涜したこの身体 預言の流星ジオメトリー描いて咎人の眉間をつらぬいてしまう 永遠の制裁をあの人が私に銃口を向ける 迷うこと無く今すぐに撃ち抜いてきっと日が登る迄に答えが欲しい躊躇うのなら追わないでもう二度とあなたを感じられないの 何を恐れている この場所では悪魔の囁きも聴こえないのに その瞳は血を流す度に輝いて氷の要塞も溶か…

  • 沈める月 – 武田理沙

    翡翠の欠片を一雫誰か呼んでいるね低い空は溶け始めている宵へ戯れて 綺麗な花冠だけ集めて注ぐコーラルレッドその憂いを唇に当てる十字を刻む腕 途絶える足音ざわめく祭壇 声も指先もつかの間の日々も風になり消えてゆく 旅が綾なす理忘れていないか穏やかに荒れる景色を雲が覆い尽くしても道は続いて限りない超弦に沈む 貴い 籠の中の鳥が告げる 黎明に櫃を 空高く放って誓う 再会を いつの日かここでまた会える 声も…

  • 組曲「薬疹」 – 武田理沙

    第一楽章「紅斑」 どうしてこの使命を与えられたの一度も望んだことなんてなかったのにどうして歩み寄ることなく闘うの一人瓦礫の山を見送って 醜い醜い体の中 這い回る変色した皮膚の下を 這い回る宿主は何処へ 盗んだ羽を飾りにして踊るあどけない笑顔あと少し歯車が遅ければ識らずに済んだのかもね 第二楽章「水疱」 あなたは美しく背景を塗りつぶすわたしは駆け寄って大樹のそばに佇む 全身に拡がる業の花烙印を刻み破…

  • 断頭台の灯 – 武田理沙

    失った未来と真実と引き替えにこの街の矛盾と嘘を教えてあげる 欲しかったものは全て手に入れたから死神の逆鱗に触れてしまったそれだけ 干からびたパンと葡萄酒とわずかな祈り枯れ果てた眼にうつるものは何も無い 「うしろの正面だあれ?」 鉄格子の窓から呼び止める気配に懐かしさをおぼえ 賽を待つ あてのない空の蒼さには 届かないから足元に転がる 首 歳を待つ あてのない空の蒼さには 届かないから振り返ることも…

  • 深海魚 – 武田理沙

    突然にないた 風見鶏時計の針は 意味をなくして 歪む 景色が見たいと 窓際に座った君は 魚になって 泳ぐ 夢は落ちる姿を変え今夜新しく瞼を開ける 知らない他の誰かが言ったこの先には誰もいない と 夢の続きは 明日の闇迷い込むレプリカの水槽いつか 君に見せたい最果ての朝 永遠に続く螺旋 夢は落ちる姿を変え今夜新しく瞼を開ける 知らない他の誰かのように虹色の空に 悪戯に手を伸ばし跡形もなく 消える 人…

  • 揺らぎ – 武田理沙

    蒼くささめく枝の合間を冷たい灰色の砂で縁取る 世界の秩序は平面に保たれて移ろう存在を消し去るように 彼女は、 遠く離れた異国の春を想う いつの間にか日は傾き―― 探さないでと 言って蘂ふる片隅に 預けた 瞳なぞるように遮断機が降りてゆく 彼女に囁いた額縁の小人が ――針を進めたいのなら、点と点を結べ―― 傍らの砂時計が今 落ちて砕けた 二つ目の岐路まで続く白線 の 微かな揺ら ぎ な どとうに値を…

  • ゼロと無限のQ明 – 武田理沙

    明け方に訪れる当たり前の風景は ひとひらの影を成す透明な濁りのように酸素を奪う 訳もなく 泣き叫んでいた低く唸るざわめきが確かに聴こえる 果てなく広がる存在の尊さに赦すことをおぼえたのだろう 遠い朝の目覚め昏迷を切り裂いて歩き出していた 遠い朝の目覚め昏迷を切り裂いて鳴り止まない鼓動が 言葉も忘れて立ち尽くしていた眩い光へと ゼロと無限のQ明平衡な起点から途方もない海原へ 何も恐れはしないと地図は…

  • スーサイドスター – 武田理沙

    水面の虚像に魅了されている滑稽な生き物流刑地で果てるとびきりの笑顔で酔いしれる悲劇紙一重さお前の美しい錯誤路地裏で名も無きがらくたの山を抱えて今日も踏みにじる人生救いのない映画みたい楽しんでよ次は無いから止まない雨は小さな花を咲かせたと言い聞かせる茶番みたいな自傷行為のあとには磔刑の絵が似合う押し寄せる孤独の海に助け舟なんていらない深度感知できないくらいに見下しているだけ泥沼に引きずり込む聖者の偽…

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