次松大助

これくらいの – 次松大助

「またしても春の手口、朝を拐(かどわ)かすわ」
そう言って君が起きた 午後の光

あー幸せのかたちをそっと、これくらいの箱に詰めてゆきます

「世は春の日とかはりけり」菜の花茹でて
長い髪で手を拭いた 春のしずく

あー幸せのかたちをそっと、これくらいの箱に詰めて行きましょう
二輪にまたがって

丘の上のほう ボロい四阿(あずまや)にね、
腰を掛けて取り出します
これくらいの幸せをパンにはさんで、
えぇ二人でそっといただきましょう

用水路には雪解け、透明の速度で

「あぁハモろうとしてみても つられてしまう」
歩道橋のサビと青空、君が見上げて言う

変わっていくものと、そうじゃないもの
手に負えないほど、ときに儚げなもののために

丘の上のほう ボロい四阿にね、
腰を掛けてお話します
力に任せても 守りたいものを
ぼくと君のこれくらいを

春も夏も秋も冬もあとどれくらい、
そんな約束なんて出来はしないのだから
もしも終わりまで綺麗なだけじゃなくても
それでもこれくらい、たったこれくらいの

二日酔いで見つめ合ったり
うたた寝に毛布をかけたり

同じ跡形を心に残すのでしょう
同じ涙もたくさん流すでしょう
触れるだけで優しくなれるような
そんな跡形(もの)と二人で暮らしましょう

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