橘いずみ

  • ウサギとベルベット – 橘いずみ

    汚れた藁に潜り込んだら隠れるように体すくめる痩せたウサギの赤い瞳が光った金網越し狭い檻の隅握り拳ぐらいの塊私見ていた ミイラみたいなニンジンひとつもっとおいしいゴハンをあげるもっときれいな住みかをあげる 待ってていつもペットショップの店先ガラスに鼻を付けて話したひとり ウサギと ナフタリンの匂いと一緒に衣装箱の中で眠ってるベルベットのよそいきドレスとバレーシューズ白いフリルと金のボタンと星のペンダ…

  • ハヤリスタリ – 橘いずみ

    満点狙ってとれっこない平均点もスレスレだい優等生にはなれっこないでも並より下では耐えられない流行敏感まねっこだい最高鈍感ぶりっこだいキャンペンガールにゃ勝てっこないでも内容勝負でイーブンタイ ここ掘れワンワン ポチがなきゃ花さかじいさん舞い上がる竜宮城には行けっこないでも はまってしまうよ浦島ちゃん素敵な情報お得な情報特典つきだよチャンスだよ根拠も論拠も何にもないでもテレビが言うから信じてたい 耳…

  • MOON PALACE – 橘いずみ

    壁にのぼって てっぺんに立ちあがってお辞儀するよな ぎりぎりの生き方でも肩を組んで体揺すり 声をあげて笑いあえば恐いものなんて なにもなかった バスの尻尾に しがみついてビーチまで指がきりきり ちぎれそうになったけど砂の上寝転んだら 月のなかうさぎたちがここへおいでと 手を振ってたよ 小さな夢忘れて うづくまってたころ現実を楽しめずに 吠えてばかりいたよいいかげんにやってれば まあそれなりで一生懸…

  • 退屈 – 橘いずみ

    ギターの弦がパシッと切れた爆発みたいにパシッと切れた雷落ちたら電源切れた触ると危ない感電するから真っ黒焦げで骨まで見えたギターの弦が突然切れた面倒くさくて弾くのをやめたナメクジみたいに絨毯の上はいずり回って百円見つけた抜けた髪の毛集めて捨てたリモコン探して見つからないから足の親指テレビをつけた天井見てたらおかしくなった私の退屈 誰かもらって 人の形の枕を買った強く抱いても頭をなでてもやさしくしたっ…

  • BLUE ARCADE – 橘いずみ

    寝言でも 名前つぶやいて逢いたくて もう 逢いたくて泣いてばかりいたよ近くても 遠く離れてもほかのこと もう 何もかもどうでもよくなってた 街のどこか ふと目をあげてそこにあなたが笑っていてくれたらある日どこか 胸が騒いでそこであなたともう一度めぐりあいたい 好きだって言葉じゃ言えないこわれそう ああ こわれそう不安な気持ちが弱くなる もっと 弱くなる少しずつ ああ 少しずつ悪く考えてく 街のどこ…

  • NATASHA – 橘いずみ

    モスクワを出たナターシャは南の島の牧場で姉の手紙を読んで泣いた重いコートのイリーナは雪にうもれた広場でウォッカのビンを抱いてひとりつぶやくよああ 靴をくれ歩くために 靴をくれ強い靴をくれ 二年見習いのシンディは歯ブラシをくわえたまま熱いシャワーで夢をさますリムジンのなかのジャスティンはかたいガムを噛みながら卒業式の夜を思い出してるねえ 花をくれ色のついた花をくれ淋しいから そばにきて抱き締めて つ…

  • RADIO WAVE – 橘いずみ

    本当の名前は教えない友達はマクベスとアイリーンラ・ブレア通りのナイフショップ星条旗つきの宇宙船 迎えにきて朝まで待ってる 空みてBaby 赤いパジャマで 堂堂巡りで終わんないからだひとつでもご安泰腹ペコしのぎのメロンパン言葉をあやつる知能犯 詩人きどり細胞のすみの アメーバーBaby いつからここに? 楽しめなけりゃ 意味がない意味がなくても 楽しみたい 五分もしたなら 外へラジオを消したら 外へ…

  • 深夜急行 – 橘いずみ

    ホテルの部屋 満室のネオンごみ捨て場 新品のハイヒール安いパヒューム ソースの匂い何がおかしいか笑い声ゆっくり踊る 白髪の男耳から逃げて転がるピアス夢はどこへも逃げていかないのに 薬の数より多い病気金をくれとせがむテディボーイ真夜中に銀のケースは変何を運ぶのか しかめっ面地下鉄の出口が閉まったテレビが終わる前に帰ろうロクな事を考えられない夜 タクシーがとめられない行き先を言えそうもないタクシーには…

  • WINDOW – 橘いずみ

    新しい時代なら 科学と言葉と愛向こう側で誰かが 大声で叫んでるそれより窓の下 待ってる人がほしい夜道を照らす月は 雲の中だけどYEAH 抜け出すためにYEAH 探してるYEAH かすかな希望が擦り抜けてく穴何度でも ささやく AHI LOVE YOUI LOVE YOUI LOVE YOU ALL NIGHTいつだって わたしは歌うI NEED YOUI NEED YOUI NEED YOU TO…

  • 自分 – 橘いずみ

    頭の中ひしめいてる 思いはいつでも自分のことでいたわりとか謙虚さだとか そんな余裕なんてどこにもないやりたいこと それが一番欲しいもの それも一番分け合うことの喜びを忘れてしまってる 愛がすべてを救ってゆくのなら君はどうして自分捨てられないやさしさとか いとしさとか計算するのはやめにしよう ありふれた生き方よりも 個性的だねと言われたいからわがままとか ずるさだとか そんな弱さまでむき出してる楽し…

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