楠木ともり

バニラ – 楠木ともり

夢中で遊んだ大きな遊具
あなたの「遊べない」がわからなくて
今ならわかってしまう
こんなに小さく見えていたんだね

それでも笑顔で待つ優しさに
私は飛び込んで知っていった
いつまでも続かない温もり
時間は指先を冷やす

決して消えないはずの思い出から
次第にあなたの声だけが消えていく
だから何度も叱ってほしかった
その分記憶に刻んでいくから

あなたの声はバニラに溶けて
私に甘く残り続ける
誰が見たって普通の日々も
私にとっては溺れるほどの愛だ
あなたの声はバニラに似てて
私の焦り 穏やかにする
いつか慕った普通の日々に
白く馨る花を添えて

知らない世界に飛び込んだら
あなたの気持ちさえもわからなくて
夜風に当たって想う
心を切り裂く言葉があること

賭して消えてしまったものは何だ
光になれない惨めさは残っていた
だけど見つけた私の在り方を
強く肯き信じてくれたら

私の声がバニラに溶けて
あなたに甘く残る頃には
誰が見たって普通の日々も
あなたが愛すことのできる未来に
溢れる声はバニラに似てて
私の震え 優しく包む
いつか願った多幸の日々に
白く馨る花を添えて

あなたの声はバニラに溶けて
私に甘く残り続ける
誰が見たって普通の日々も
私にとっては溺れるほどの愛だ
あなたの声はバニラに似てて
私の焦り 穏やかにする
いつか慕った普通の日々に
白く馨る花を添えて

いつか慕ったあなたの声に
白く馨る花を添えよう

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