森田童子

さよならぼくのともだち – 森田童子

長い髪をかきあげて
ひげをはやした
やさしい君は
ひとりぼっちで ひとごみを
歩いていたネ
さよなら ぼくの ともだち

夏休みのキャンパス通り
コーヒーショップのウィンドウの向う
君はやさしい まなざしで
ぼくを呼んでいたネ
さよなら ぼくの ともだち

息がつまる夏の部屋で
窓もドアも閉めきって
君は汗をかいて
ねむっていたネ
さよなら ぼくの ともだち

行ったこともないメキシコの話を
君はクスリが回ってくると
いつもぼくに
くり返し話してくれたネ
さよなら ぼくの ともだち

仲間がパクられた日曜の朝
雨の中をゆがんで走る
やさしい君は それから
変ってしまったネ
さよなら ぼくの ともだち

ひげをはやした無口な君が
帰ってこなくなった部屋に
君のハブラシとコートが
残っているヨ
さよなら ぼくの ともだち

弱虫でやさしい静かな君を
ぼくはとっても好きだった
君はぼくのいいともだちだった
さよなら ぼくの ともだち
さよなら ぼくの ともだち

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