森ゆに

何をしても – 森ゆに

霧のように夜が空をおおいかくして
あなたの好きな歌をうたう帰り道
寂しくて仕方ない

新しい服をまとって街を歩けば
人ごみを通る風と交わすおしゃべり
寂しくて仕方ない

懐かしい人へ短い手紙を書いた
今頃はきっとまだ淡い夢のなか
寂しくて仕方ない

暮れかける窓の外へ耳を澄ませば
あたたかい夕陽のなかを電車は走る
寂しくて仕方ない

とめどなく夜は過ぎて朝を迎えよう
明日は星がめぐってあなたと出会おう
寂しくて仕方ない

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あなたはあなたで – 森ゆに

暗がりは 怖くはないよと教えたでしょう晴れ着は 持たずに行きなさい重たいから歩みのはじまりの時の扉を 開けましょうあなたはあなたでわたしはわたしでぬかるみに 足

星のうた – 森ゆに

東の空から アンドロメダの微笑みをたずさえ 夜は来るどこから生まれて どこへ消えるの瞬くはサソリの 赤い星憂いは銀河の渦のなかに君とゆうげを囲んでまた明日の 話

白昼夢 – 森ゆに

水色の 風の音耳を撫でたら旅人のまぶたに 魔法がかかるただ 見えるのは雲の影それからパレードの声が聞こえる赤色の ワインにほろ酔いのころ旅人のまぶたの 魔法が解

バラの咲く庭で – 森ゆに

あたたかい ろうそくの灯が私を照らすのでなにひとつ 心配いらない静かに眠れますコデマリの 花が咲いたらいつでも思うでしょう透き通る 白い寝顔は神様のよう飛んでい

夜をくぐる – 森ゆに

夕暮れに目を伏せたなら涙もこぼれましょう夢の終わり消えかける光に影を落としていく荷物を捨ててしまったならどんなにか楽でしょう愛の渇き水を求める鳥は風のように鳴く

瞬き – 森ゆに

水たまりが二人を映して 泣いている白い太陽の 長いあくびに二つの影が伸びていくまでの一瞬に風が背中を 押してゆく風が背中を 押してゆく静かな灯りのなかであなたが

春一番の風は激しく – 森ゆに

匂いいずるちんちょうげの花によいしれる町通りのさま目ざめさなびき朝もや日をあびて 時をまてずああ 春一番の風は激しく見上げいずるもくれんの花にちりそめし白波のさ

一日の終わりに – 森ゆに

ああ一日の終わりにさしかかり私の部屋を死の影が覆うああこの手も足も目も鼻も耳もすべてがあなたのものおやすみよ かわいいひと薄紅の夜明けがまた来たなら半分開いた冬

雨 – 森ゆに

たそがれ時になつかしく あなたを想う待ちくたびれてなお匂う 真夏の静けさ帰らぬ人の恋し 道はぬかるみ歌ったわ 気の休まるまで今にも傾きそう 灰色の空雨だれ 洪水

旅人たち – 森ゆに

過去と未来より 来たる旅人そっとその目を閉じ 耳を澄ませる長く影を曳く 強く呼ぶ声誰も触れられぬ 心より出ずる闇からの影 水に映す帆岩陰を通って 走る犬の尾夜更

帽子 – 森ゆに

吹き抜くすきま風白くかたどったうなじの艶っぽさを通り抜けて舞い上がっていく帽子を取る間もなく遠くへさらっていったたまにかすめた黒い雲を越えて消えていくたしかに夏

夏は来る – 森ゆに

あなたのいない空に星はめぐり白い小舟のようにゆられていくあなたのいない海にひとり浮かび真昼のちぎれ雲をつないでいく美しくいられる 薬はなくても夏は来る 夢のよう

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