柴草玲

精霊たちのえくぼ – 柴草玲

降り始めた雪 手のひらに一粒舞い降りて
うつろな私のこの胸を 冷たく焦がす
はしゃいだ人々の波
楽しげなクリスマスメロディ 流れる街で

僅かずつでも 着実に塗りつぶされるのは
私が残した足跡と 笑わない木々たち
ありきたりの倖せに
今日も背中を向けたまま
あなたに触れるために街を急ぐ
私は急ぐ

空をまき散らす まるで束の間のファンタジィ
けがれの無いその手で二人を隠してよ
誰にも見えないように

降り続く雪は ビルの隙間華麗に舞い踊り
都会の汚れは 道の脇に積み上げられてゆく

深く暗い隠れ処に
二人は逃げ込んだまま
凍えるその身体をせがむように
抱きしめ続ける

白く舞い上がれ
狂おしく濡れてゆくファンタジィ
愛しさや哀しみの上にゆるやかに降り積もる
幾千もの精霊たちのえくぼ

空をまき散らす
まるで束の間のファンタジィ
けがれの無いその手で二人を隠してよ

白く舞い上がれ
いつか消えてゆくファンタジィ
愛しさや哀しみの上にゆるやかに降り積もる
幾千もの精霊たちのえくぼ

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