柴草玲

会話 – 柴草玲

寒い朝、とても寒い朝の事だった
悪い予感は当たって本当になったんだ
1933.2.4

制服を着込んだ男たちはたいそう
威張った様子でお家に来たんだ
1933.2.4

痛さも寒さも寂しさも屈辱も
堪え切れず吐き出した言葉もひとつ残らず
身を切るような空気にとけていったものさ
1933.2.4

うらんではいないと言ったらば信じるかい?
おやまあ、そんなにお怒りなさんな
2003.2.4

誰が悪いだとか悪くないだとか
そんな事誰にもわかりっこないのさ
2003.2.4

いいんだ それよりシューベルトを弾いてくれ
あれがいいな あれは確か孤独な青年のうた
冬の荒野を永遠にさすらってゆく

いいんだ それよりシューベルトを弾いてくれ
さっきからその手に握ってる
哀しげに冷たく光るものを捨てなさい
そして涙ふきなさい

そろそろおいとまするよ
話の続きを聞きたけりゃ
君が君のうたをうたい終わったその日にね

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