村上幸子

不如帰 – 村上幸子

命二つを 結ぶ糸
ちぎれて哀し 相模灘
あなた あなた あなた…
この世の次の 次の世は
私のために 下さいと
泣いて血を吐く ほととぎす

添えぬ運命が すれ違う
京都の駅は 涙雨
いいえ いいえ いいえ…
あなたと生きた 一とせは
千万年と 同じです
夢を宝を ありがとう

思い続けて 死ぬことの
しあわせ知った 逗子の海
そうよ そうよ そうよ…
あなたの船の 丸窓で
夜啼く鳥が いたならば
それは私の ほととぎす

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女の旅路 – 村上幸子

流れ流れて 明日は浮雲女ひとりが たどりつくのは潮の匂いの 北の酒場か嘘の上手な 男の胸かあゝ 恋の灯りを ともせばあゝ 風が吹き消す何でこの世に 生れてきたの

京の川 – 村上幸子

生きるか 死ぬかの 恋をして女は綺麗に なるんやとうまいこと 乗せはって魂抜かれて しもうたわ泣いて 渡った 高野川あの日と同じ 顔をして川が流れる 松ヶ崎いい

笹舟 – 村上幸子

あなたを待ちます いつまでも…こころ託した 笹舟を日昏れの中へ 流す川東京へ きっと届くと信じていくつ夢を流した ことでしょう迎えてください その胸に…どんな苦

盛り場かもめ – 村上幸子

男の心は通り雨気がつきゃもういないうそとまことの真ん中であ~今夜もひとり寒いよ 寒いよ今じゃすがれる人もないあ~誰かそばに来て盛り場かもめ 私はかもめ赤いネオン

螢火情話 – 村上幸子

暗い海鳴り 窓の外ため息一つ肩でするあれは螢火 恋の火かいとしい男の腕の中とべない女が 泣いて 泣いて 泣いて身をこがすハァー二度と惚れまい他国の人には海鴎おま

北の港のみれん船 – 村上幸子

北の港の 桟橋にあなたがつないだ みれん船このまま雪に うずもれても錆びてほろびる さだめでも小指に巻いた まっかな糸は涙 涙 涙なんかじゃ ちぎれない寒さつの

酒場すずめ – 村上幸子

涙という木に 止まった鳥は人のやさしさ 忘れないどうせ俺らは 酒場のすずめちゅんちゅん ちゅんちゅんちゅんちゅん ちゅんちゅん注いでおくれよ 情の酒を幸せ探して

それなりに青い鳥 – 村上幸子

爪を噛む 女にだけ聴こえる あの歌は裏切りの哀しみか男の呼びかけかひゅる ひゅると鳴るのは真冬のあらしでも泣いたら駄目 死んだら駄目それなりに青い鳥膝かけの 上

にごりえ – 村上幸子

灯り喰えて 沈む身に似てやしないか ほてい草胸をはだけて 団扇をつかうふてたつもりの 襟足に昔しゃこれでも 花だよと忍び泣きする 艶ぼくろ落ちてもがけば もがく

放浪記 – 村上幸子

束ねた髪に ほこりをためて一皿五銭の 菜を買う灯りさざめく 帝劇も宵の銀座の にぎわいも知らぬ知らぬ他国の うつし絵か青い青い秋刀魚の 目に涙なんにも無けりゃ

津軽平野 – 村上幸子

津軽平野に 雪降る頃はヨー親父(おどう)一人で 出稼ぎ仕度春にゃかならず 親父(おどう)は帰るみやげいっぱい ぶらさげてヨー淋しくなるけど 馴れたや親父(おどう

雪椿の唄 – 村上幸子

雪のなかから 生れても赤く咲きます 雪椿もえる想いで 花びら染めて咲けばわかって くれますか胸にひそめた 花言葉岩の湯舟に ひらひらと落ちて重なる 雪椿おもい出

恋のわかれ唄 – 村上幸子

越路(こしじ)の里に舞う風花はどこかしあわせ 薄い花あなたと別れた旅路の果ては耳をすませば瞽女うたがあゝ……聞こえます明かりの帯をひきずりながら闇を流れる 汽車

花ぬすびと – 村上幸子

花ぬすびとは ゆうべのあなた夢追人は 夜明けのわたしそえぬ運命の 浮き世の風に咲いてみたい 赤い命夜がいじめても おんな花ぬくもりほしい 止まり木の隅にがてなお

くちぐせ – 村上幸子

男なんてが くちぐせのばかな女が 恋をしたどうせ今度も 駄目なのと笑いとばして 見たものゝ信じてみたい もう一度そっともらした 一人言二度といやだが くちぐせの

おせん – 村上幸子

誰が女を 弱いと言うのいいえ 私は 負けません坊や しっかり つかまっててねうしろ指さす 世の中を涙みせずに 歩くから好きなあなたを 亡くしたときに川で拾った 

恋小舟 – 村上幸子

今年の春は 遅れて来るわ遅れた春は 暖たかい傷を重ねた 命がふたつ舵を取れない 故郷へ帰りたい 帰れない 恋小舟涙で結ぶ こころと心他人になんか 切らせない肌を

人生に四季があるなら – 村上幸子

人生に 春があるなら私は あなたに咲く 花になりたいひそかに あざやかに 咲きつづけていつも あなたの やすらぎになりたい人生に 夏があるなら私は あなたを呼ぶ

縄のれん – 村上幸子

ひょろりよろける お前の肩をしっかりしろよと 抱き上げりゃすまぬすまぬと 千鳥足俺もお前も 夢を拾ってまた落とし男同志の 縄のれん逢えてうれしい 何年ぶりか幼な

こころうるおい夢本線 – 村上幸子

あなたはいつ 旅立ちますか何も言わずに 母が…手料理こさえて いますはじめて会う日の 目じるしにそっと一枝 ユキツバキ抱いてホームで 待ってますきっといい日に 

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