村上幸子

  • 涙の最終列車 – 村上幸子

    帰らないでと すがって泣けばあなたこのまま いてくれますか窓の硝子を 叩いてもおんなごころが 届かないわたしも行きたい……別れのベルが鳴る 最終列車 顔をかくした コートの襟に霧が降ります プラットホームくちの動きで 解るから言って下さい ねぇあなた愛しているよと……ふたりを引き離す 最終列車 赤いランプが 螢のように揺れて流れて 未練がのこるいのち燃やした 恋だもの信じたいのよ いつまでもあなた…

  • 一生よろしく私のあなた – 村上幸子

    山の清流(せせらぎ) 雪解け水に揺れる木洩れ陽 緑の夜明けふたりがうれしい 幸せだから肩に肩に肩に置いた手 温かい一生よろしく 私のあなた 遠い汽笛が ポーッと鳴いて北の山脈(やまなみ) 列車が急ぐ明日へ歩こう やすらぐ町がきっときっときっと何処かに あるはずよふたりを包んだ 出湯(いでゆ)の煙 八重に咲くなよ おんなの椿恋は一重で 命を賭けるあなたと並んで 待ってる春を知って知って知って溶けるか…

  • じょんがら恋唄 – 村上幸子

    連れにはぐれて 啼く海鳥の声もしばれる 北の海じょんがら節は 怨みの歌とあなたを捨てて 未練を捨てて遠い人なら 人なら忘れてしまいたい ひとりぽっちの この淋しさは誰もわかって くれないがじょんがら節は 涙の歌とあまえてみたい 縋ってみたい何処へ行ったら 行ったら女の夢がある 強くなったら あの街あかり赤くもいちど 点(とも)したいじょんがら節は 救いの歌とわらってみたの 歌ってみたのそして今度は…

  • 雪の越後をあとにして – 村上幸子

    雪の越後を あとにして私を捨てた あなたはどこに…… 想い想いつづけて 昼も夜もないわ涙をくぐるたび 女はおとなになってゆくのね取りのこされた 案山子のように歩けない歩けない ひとりぽっちじゃ歩けない傷つけたままで 男っていいですね 過去に過去につかまり 今日も明日もないわどんなに焦がれても 私はあなたの踏台だったのねおもかげだけを 私にくれてとどかないとどかない いまのあなたにとどかない夢を追い…

  • 昭和金色夜叉 – 村上幸子

    胸にひとりの 魔女が住み女は愛に 背(そむ)くのね過ぎて思えば あなたが命いまさら知った 己(おの)が罪(つみ)悔み足りない お宮の松に金色夜叉の 月が出る わかりますとも 女ならお宮の踏んだ 迷よい道見栄を飾れば 誠が逃げて闇路を照らす 夢もなくダイヤモンドも 錦(にしき)の綾(あや)も癒せぬ傷が 身をえぐる こんどあなたに 逢えたなら死んでもそばを 離れないどうぞ私の 肉ひきさいて怨みに代えて…

  • 女の雪国 – 村上幸子

    雪が私の 母ですとほほえむ肌に 雪を見た裾をからげて 帯にはさんで叶わぬ恋を 背おって歩く駒子のように意気地(いきじ)で生きる 越後の女 あんた私に 似てるから苦労するわと かすれ声炬燵蒲団(こたつぶとん)に お酒ならべて男なんかに 負けちゃだめよと紬(つむぎ)の肩を稲穂(いなほ)のように ふるわす女 雪が紡(つむ)いだ 恋ならば燃やせど燃えぬ 氷花好きなあなたに 好かれたいから別れ上手な ふりを…

  • おまえと生きる – 村上幸子

    浮草みたいな ふたりでも夢があるから いいと言うこんな男に 明日(のぞみ)をかけてつくす女の いじらしさどこへはじけても俺はおまえと おまえと生きる ふたりで背おう 苦労なら重くないわと 目で笑う一対(つい)の湯呑みに 茶ばしらみつけあなたごらんと 肩よせるこの手離すなよ俺はおまえと おまえと生きる この雨あがれば 街うらに遅いふたりの 春がくる泣いたら俺の この目がみえぬ抱けばいとしい 輪丁花(…

  • 泣き砂の浜 – 村上幸子

    かなしい恋の 伝説がひと足ふむたび きしみますおぼえていますか 去年のこの日あなたと歩いた 泣き砂の浜あゝ別れの手紙を ちいさくちぎり海にちらせば 雪になる あの日につづく 足あとが涙のむこうに 見えてますあなたをさらった 月日の波もおもいで消せない 泣き砂の浜あゝふたりでひろった この貝がらを海にもどせば 消えますか もどりの冬の きびしさがひとりじゃなおさら こたえますあきらめきれない ぬくも…

  • やがて港は朝 – 村上幸子

    海が荒れる 女が痩せる 船も来なくなる恋が逃げる 涙がのこる 酒場の片隅逢いたい 逢いたい 死ぬほど逢いたいタバコにむせた ふりをして別れまぎわに 涙をかくしたあなた思いでけむる 暖炉も消えてやがて……やがて港は朝 お酒がしみる グラスが割れる 夢も見なくなる過去がぬれる 未練がつのる つめたい小窓にもえたい もえたい もいちどもえたい言葉はいつも 強いのに酔ってすねても やさしくゆるしたあなた悲…

  • 虞美人草 – 村上幸子

    この世はひとり あなただけ貴方が死ねば 私も終るさまよう蝶々を 迷わせてルラルララ ルラ赤い炎(ほのお)で 焼きつくす虞美人草は 業(ごう)の花 静かな雨に ぬれながらそれでも花は 妖しく匂う虞(ぐ)や虞(ぐ)や 汝(なんじ)を如何(いか)にせんルラルララ ルラ遠い昔の ため息をいま呼び返す 艶の花 藤紫(ふじむらさき)の 稲妻(いなづま)が光れば落ちる 哀れの雄花(おばな)すてられながらも しが…

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