服部富子

別れのオランダ船 – 服部富子

港長崎 オランダ船の
せつない別れの 銅鑼が鳴る
泣かないで 送りましょうよ あの人を
悲しいけれど
明日から わたしは思い出に
生きてゆくのよ ただひとり

坂の長崎 ふたりの夢の
儚い生命の 曼珠沙華
手をふれば いつか恋しい 面影も
涙ににじむ
潮路も遥かな バテレンの
国は西やら 東やら

暮れりゃ長崎 ザボンの月に
灯りも淋しい 色硝子
逢える日の あても無いのに いつまでも
待つ身がいとし
せめては やさしいマリアさま
胸の想いを 伝えてよ

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秘めた恋 – 服部富子

心の青空 浮かぶ面影は 君の影よひとり秘めて 思いわびて黒髪いとし 春かなし誰も知らない 心の君よ秘めた恋 君も知らない心の夕空 宿る面影は やさし影よ花を捧げ

愛国娘 – 服部富子

若い黒髪 きりりと結び臙脂(べに)もつけずに エプロン姿街の夜明けに 工場の笛に行くよゆきます 愛国娘昼と晩との ニュースを聞いて胸にしみこむ 戦地の便り地図を

満州娘 – 服部富子

私十六 満州娘春よ三月 雪解けに迎春花(インチュウホウ)が 咲いたならお嫁に行きます 隣村王さん 待ってゝ 頂戴ネ銅鑼や太鼓に 送られながら花の馬車に 揺られて

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