日食なつこ

  • やえ – 日食なつこ

    話すことはないけど会いましょうって春の宵排気ガスを浴びて終わらない夢を見る巻き上げるダストが突き刺さって涙目ちょうどよく覗き込む見知った顔がにじむ 行くあてもないまま歩きましょうって春の宵境目をなくして淡い夢に落っこちるほとんどもう破綻している世界においていまだ狂わずにいるその影が 揺らいでばっかのこの道の先でどれほど光だったか知れない 話せば話すほど溺れていく春の宵ひと挿し早咲きの八重の桜眺むあ…

  • 夕闇絵画 – 日食なつこ

    グレイオレンジ街は夕暮れ 途絶える風 サイレン覚えておきたい景色は多くはない そう今目の前の君以外にないのさ グレイオレンジ街に通り雨 君が伸ばした手叩きつけられて潰える2秒前の哀れな雨粒を受け止めた あれが僕じゃないこと 妬んでしまうなんてどうしようもないな気がふれてしまう前にもう 帰ろう 何ともなしに君が歩く風景に立ち入ることすら許されぬ僕それじゃまたねと分つ三叉路で「また」などないって気がつ…

  • 幽霊ヶ丘 – 日食なつこ

    とうに見頃も過ぎ去りて寒空に穂を揺らす芒原誰の面影を そこに重ねてる 孤独を望む逃げ場を探す必要のない命もあると知る想い遂げられた とて続かぬだろう 風もなき 悠久の丘にて綴ったいたずらな恋を迎えに来る人ついぞ現れず絵空事の朱い火燃ゆ 見渡せども幻影ばかりでどっちつかずの足場に吹き溜まる野分裾濡らす 恋路よるべなく 風ゆらぎ 幽閉さるるここへ吹いたうちひさす京の謡い踊る息吹不意に胸を打つ絵空事を望…

  • ダム底の春 feat.Sobs – 日食なつこ

    お気に入りの場所を誰にも教えないまま何度目の春今日も水位はひどく低い無人のダム 干からびたダム 適宜適切な距離誰とも測れないまま快適な日々こんなとこに一緒に来たい人も思い浮かべられない 昨日は確かどしゃ降りの雨だった溢れ返るくらいを期待して来たってのに拍子抜けさ そこらじゅうに花が咲いてて足の踏み場もないくらい春こんなことになるなら買わなくたってよかったな 助手席に寝かせた花束 ぶら下げて向かう先…

  • diagonal – 日食なつこ

    君の涙は宝石になると言ったあの日の貴方へ あたしの涙はまだ涙のままです 必死の抵抗も虚しく夕陽は落ちたあの日のあたしは 優しい夢じゃない 冷たくても現実 それがそれが欲しかった 慰めなんかいらなかったなのに貴方は連れ去った 優しい夢の向こうへ しんしんと音もなく空に夜は降った離れないでと貴方が握る左手を振り払った 必死に叫ぶ声 「君を守るために来たのに」それじゃ駄目だって分からない人とこの橋は渡れ…

  • ライオンヘッド – 日食なつこ

    ライオンヘッドは風に揺られ 今日も孤高をたなびかす遠方跳ねるガゼルの群れ 襲うのだって勇気がいる 「ライオンヘッドに近づくな」 その荒野の合言葉逃げ出す一瞬誰の視線も恐怖以外の何かが光る 空腹でもないのに襲ったりするかいな爪、たてがみ、牙が揃ってるだけでこの有様さ ライオンヘッドは風に揺られ 今日も耳をそばだてる遠方水辺ゼブラの群れ 笑った声で空気が割れる ライオンヘッドの荒野にある日迷い込んだ人…

  • クロソイド曲線 – 日食なつこ

    体感速度よりずっと速くやってきた朝に打ちのめされつつ急勾配を鈍牛の如く這い登る僕もっと遅い君 この坂を登り切ったらもう終わりでいいだろうもう歩けやしない 2人分の疲労 正しい速度でさっと僕ら追い抜いた影に打ちのめされつつ急勾配あと少しだアルコホル残る僕もっと酷い君 この坂を登り切った先に続きがなくとも 明日を描くであろう 2人分の愚行 手を取り合って一直線 穴だらけの羽で飛んでいた障害物避けられな…

  • 最下層で – 日食なつこ

    深い穴に落ちた 自業自得の日々を享受する巧くことを運んだ誰かが追い抜いた音がする 無駄に使ってしまった時間が化石になり落ちている「また来たのか お前」 骨になった指先が僕を指す「一度で学べと言ったろう俺は言ったろう なのにまたやったのか」注ぐ罵倒にかざすべき盾も 今はなく 正論の雨を体に浴びて 尊厳の類は流れ落ちて何にも持ってない僕になって 清々しいほどの最下層で 深い穴に落ちた 僕以外にも誰かか…

  • un-gentleman – 日食なつこ

    やあお嬢さん旅の途中かいバックパックが重そうだねUn-gentleman I am.どうしたんだいそんな急いで探し物が見つかんないのかいUn-gentleman I am. ここは光を寄せつけぬ森あんたは呼ばれてここに来たのさ なあ 空から降ってくる星ばっかりあんたは追い回しすぎだぜ不機嫌な神様のために踊るような真似はやめてくれ やあお嬢さん怒ってるのかいちょっぴり僕も言いすぎたねUn-gentl…

  • 夜間飛行便 – 日食なつこ

    幾星霜ぶりの感情です それは突然降り落ちた11月、散って枯れる季節にひとり芽吹いて勝手に咲いた花 ずいぶん前に忘れていたんです 水を撒いて育んでめんどくさい手入れ必須な心 それでも僕ら抱えたがって「叶うといいよね」「似合えばいいよね」戯れの行く末 知る由もないよね Much far taller than I am you are, I guess 意味のない背比べをしたい12月、降って積もる季節…

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