新井満

  • 消防署の火事 – 新井満

    消防署は 今 開店休業消防署は 今 開店休業ここは街はずれ 丘の上桜の名所 花ぐもりのっぽの火の見やぐらのっぽのファイアーマン昔から ボヤひとつ見逃さない昔から ボヤひとつ見逃さない 消防署は 今 カラッポ消防署は 今 カラッポ10年ぶりの大火事で燃えるは燃えるは 街中が桜にうっとり のっぽのファイアーマンつい ボヤひとつ見逃したつい ボヤひとつ見逃した 消防署に 今 火の粉消防署に 今 火の粉街…

  • Monica – 新井満

    心がブルーな時に 港で出逢ったソバカスだらけの女の子 ポッケにハーモニカその名は Monica Monica Monica淋しい心に 歌をくれたよ 港が見える丘の上 ハーモニカ吹けばカモメが歌に合わせて 空を踊るよその名は Monica Monica Monicaどんな時でも 歌を忘れない 僕にお嫁さんが来た日 教会の屋根で愛の歌を吹いてくれた 不思議な女の子その名は Monica Monica …

  • 夕焼けは嫌い – 新井満

    夕焼けは嫌いだったは部屋中が 真赤になってさ窓のカーテンも 布団も 灰皿もあなたも……雨の日は楽しかったは部屋中が 洗濯物だらけ隠れん坊したら 怒られたはね階下(した)の人に……覚えてますか ほら傷ついた小鳥が 飛び込んで来た時二人 喧嘩やめて ほら看病したはね 夜明けまで ほんとうは 欲しかったの名前まで 考えていたけどあなたの邪魔に なるだけだとあきらめた……涙なんか 零さないはあの夕陽が 眩…

  • 朝食 – 新井満

    朝刊を 開けたときに眼にとまりましたムスタキのコンサートの広告あなた とても 好きだったいつか 二人で 聴きに行く約束果たせぬうちに 別れましたどんな方と 行ったのかしらふと 又 窓の外 見てるひとりぼっちの 朝食ひとりぼっちの 朝食 街を 歩いていたら二人で行った あの お店飾り窓の ブルーのセーターあなた とても 気に入ってた誕生日に プレゼントする約束果たせぬうちに 別れました寒くないかしら…

  • 遺言 – 新井満

    あいつが死んだ 前の晩酒を 汲みかわしながらあいつは 俺の眼を じっと見つめしみじみ 話をしたああ 何の為に俺達は 今生きているんだろうネ明日が 今日と変わりがないなら生きる意味があるんだろうか 俺は答えず 少し笑ってかたわらのギターを 取ってどうにかなるさ なんて歌を 歌って又 酒を飲んだそれから あいつは黙り込んで酒も飲まなくなっちまって俺は俺で 歌ばかり歌ってへべれけに 酔っぱらっちまったョ…

  • 別れの夜明け – 新井満

    東の空が赤い もうすぐ 陽が昇る誰も居ないプラットホーム 一番列車に乗る君は まだ夢の中 突然で ごめん話は あいつに聞いてくれ 逢わずに行くョ町はずれの 丘に登ったあの日を 覚えていますか夕焼け雲の 向こうに僕らは 何を 見たのかあいつは この町に残る と僕は 出て行くと 叫んだ君は 少し困った顔で黙って 遠くを見てたネ あいつとはよく喧嘩をした だけどイイ奴さ君となら うまくやれるだろうあいつ…

  • 風物語 – 新井満

    もしも 僕があの日 道に迷わなかったら栗色の髪の少女とは 出逢わなかっただろう高原の秋は深く 行きかう人もない陽だまりの 枯葉の中に 君を見つけた 風が吹いていた 雲が流れた振り向いた君の 髪が揺れた 透き通るような細い指で 教えてくれた森の向こうの遙かな空に 浅間が煙ってたおびえた顔がいつか 微笑に変わって風とお話していたのと 悪戯そうに言う 初めて出逢ったのに どうして懐かしい風が吹きよせたの…

  • オクトーバー14・外は雨 – 新井満

    青い風船 ひとつ 糸切れて風に吹かれて 飛んでった窓のレースのカーテン ふるえてる私の心のように赤いバラの花束 買って来たこんな寒い朝だからけれど 飾らぬうちに しおれたの私の心のように ここは オクトーバー14ここは オクトーバー14 白いテーブルに コーヒー ひとつでも あの頃は いつも ふたつ壁の古時計 こわれて動かない私の心のようにサヨナラも言えず 別れたあの日も 外は雨でした遠い船の汽笛…

  • ローストシティラブ – 新井満

    忘れていたはずなのに忘れていたはずなのに すれ違い 息を飲んだ フラワーロード見知らぬ人の 後姿 君によく似ていた二人の愛が終わった日の 想い出が今蘇える黙ってただ見送った 心では追いかけながら忘れていたはずなのに忘れていたはずなのに どこからか聴こえて来た ローストシティ名も知らぬ愛のメロディー 君の好きだった初めて愛を知った日の 想い出が今蘇える季節の色があせて行くのもあの頃は 恐くなかった忘…

  • 日曜日の平和 – 新井満

    日曜日の朝早く 窓ガラス蹴破って血だらけのライオンが 飛び込んで来ました「病院ならスグ隣りだョ」とベッドの中で つぶやくと「どうもありがとう ご親切に!」と言って飛び出して行きました日曜日の朝は ネムイ お客は御免だ昼まで寝よう 日曜日の朝早く レンガの煙突かいくぐって酔っぱらいのサンタクロースが飛び込んで来ました「あれ?クリスマスは まだ二ヵ月も 先なんだけどなァ…!?」とベッドの中で つぶやく…

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