戸田康平

優しいだけの男 – 戸田康平

そんな優しいだけの男を
愛していたことがある
終わる予感は あなたが先で
サヨナラは わたしが先で

あなたの部屋に香ってた
匂い思いだすよ
わたしの口癖まねて
笑ってたふたりで

浮かぶあなたの 景色たちには
彩(いろ)がまだ残っている

優しすぎて言えずにいたのね
いつから変わったのかな?
瞳の奥に あるサヨナラに
一秒で気づいたわたし

あなたの部屋に残した
面影気付くかな
あなたがまねた口癖
つぶやいたひとりで

いまもあなたの 記憶たちには
ぬくもりが微(かす)かにある

優しすぎて頼りないけれど
それでも満たされていた
遠くはなれて ゆく寂しさに
近づいてしまったわたし

はじめての部屋 はじめての朝
カフェオレの匂いで 目覚めた
照れくさそうに キスをくれたね

そんな優しいだけの男を
愛していたことがある
終わる予感は あなたが先で
サヨナラは わたしが先で

不思議だねまた思い出す。

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