志方あきこ

ひらいてさんぜ – 志方あきこ

百花繚乱 ひらいて さんぜ
百花千花と ひらいて さんぜ

春は 桜 花吹雪
夏は 朝顔 蔓(つる)を捲き
秋は 薊(あざみ)の 棘刺して
冬は 雪気(ゆきげ)に 寒椿

ひらけ ひらけや 蕾よ 花に
妍を競ひて 季節を飾れ
ひらけ ひらけや 四季折々と
百花繚乱 浮き世に 咲きほこれ

いたづらに 花のお首を盗る鳥は
雨に打たれて 帰りゃんせ

花を つむなら ひつつだけ
選び選びて 手折りゃんせ

暁けの 芙蓉は 露に濡れ
昼の 米花蘭(はぜらん) 野に微笑(わら)ひ
夕の 黄萓(きすげ)に 影射して
宵に人待つ 月見草(つきみぐさ)

かおり かおれや 鄙(ひな)に 都に
蝶を 衆生を 招きて かおれ
かおり かおれや 四季折々と
百花繚乱 浮き世に 咲きほこれ

いとをしの 花の命が散るときは
ひとひら余さず 見送りゃんせ

胸に 残りし かなしの虚は
違う御子(はな)では 埋まりませぬ

百花繚乱 ひらいて さんぜ
百花千花と ひらいて さんぜ

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