工藤順子

退屈な森 – 工藤順子

恋など知らずにいた 遠い夏 細い棘
他人(ひと)の心が 平気で読めた 見つめるだけで
すべては思いどおり 退屈だけの森

時はうねりながら 長い川を下る
濡れたままの二人 砂に残したまま
そして見つめ合った 白い光の中
あの子の心だけ 私の物じゃない

窓辺に寝転がって 永い夜 浅い息
ナイフみたいな 月と遊んだ 蒼い小指で
普通の理想(ゆめ)をみたら 普通の人になる

胸は熱く躍り 嘘が下手になると
舌の先を離れ 逃げて行った呪文
二度とあれからもう 奇蹟は起こせない
あの子の心さえ ついに読めないまま

蝙蝠達が帰る 退屈な あの森に
眩しい時間だけが 今でも 眠ってる

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