工藤順子

砂漠とダージリン – 工藤順子

ミスター 今日は朝から 雨ですね
ミスター 赤い傘で お散歩ですか?
両手伸ばして 草達が キラキラと嬉しそう
しゃがみ込んでは それを見ている 貴方も嬉しそう

ミスター 今年も貴方の トマトは
ミスター 虫がみんな 食べたんでしょう?
それでもいつも 笑ってばかり 無精ヒゲなでながら
そして不思議ね 種はやっぱり ポケットいっぱい

ミスター お茶を飲みながら
やっと 雨の上がった庭で
ミスター 砂漠に行く話
もっと もっと続きを教えて

ミスター この頃私 欲深です
ミスター こんな時期も あるものでしょうか?
他人(ひと)の視線(め)ばかり 気になって 綺麗と呼ばれたくて
重い夢など 降ろしてしまえば どんなに楽でしょうって

ミスター 賑わう街を 歩く時
ミスター アスファルトの 道の下から
小さく土が ノックするの 足に歌いかけるの
どこに逃げても 貴方の笑顔 消えてはくれない

ミスター お茶を飲みながら
そっと 途中経過など
ミスター 貯金はいかほどに?
きっと きっと想いを叶えて

ミスター 明日はどちらへ お出かけ?
ミスター 青いバスで 渇いた町へ?
眠った土に 「オハヨウ!」と 種を一粒置くの
貴方の指が 触れた場所から 緑が目覚める

ミスター お茶を飲みながら
ちょっと 眠い昼下がり
ミスター 低く歌みたいに
ずっと ずっと話を聞かせて

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