工藤順子

夕暮れ商店街 – 工藤順子

鎖の 先っぽで 飼い犬は
野良犬の 足取りを 見ている
秋の 夕暮れ時
茜に 染まった 後ろ姿が
小さく 見えなく なってゆく

青バケツ からっぽで 野良犬は
飼い犬の アルミ皿 思い出す
秋の 夕暮れ時
灯 点して 商店街は
自転車 呼び声 書き入れ時

靴音に 耳を立て 飼い犬は
少年の 帰りを 待っている
秋の 夕暮れ時
通りを 抜けたら 川沿いの道まで
グローブ 口笛 散歩の時間

暖簾が 揚がる頃 野良犬は
いつもの 店前で 座っている
秋の 夕暮れ時
女将の 手のひら 白粉の匂い
客より お先に 「今夜のオススメ」

人気の新着歌詞

草むら通信 – 工藤順子

音の無い国の 子守歌頬を撫で風が 歌う歌金色の 草むらをねぐらへと急ぐ トカゲよヘビよ星が生まれては 消えてゆく遥か時を越え 吹く風は土に這う 生き物のくたびれ

レイゾウコ – 工藤順子

怠惰な私の 冷蔵庫見るのも恐怖 賞味期限今日こそ断固 整理せんと夕立眺め 意を決す遠くで落雷 3秒の停電 青い化学反応野菜室にて 生まれし生命 ゆっくり目を開け

夏の鈴 – 工藤順子

白い 日傘くるり蒼い 影がくねり汗と 目眩の中よどむ…風が かすむ…時があの木陰まで ゆけばあの木陰まで ゆけばだけど歩けば 歩くほど遠ざかってゆく ゆらゆらと

退屈な森 – 工藤順子

恋など知らずにいた 遠い夏 細い棘他人(ひと)の心が 平気で読めた 見つめるだけですべては思いどおり 退屈だけの森時はうねりながら 長い川を下る濡れたままの二人

砂漠とダージリン – 工藤順子

ミスター 今日は朝から 雨ですねミスター 赤い傘で お散歩ですか?両手伸ばして 草達が キラキラと嬉しそうしゃがみ込んでは それを見ている 貴方も嬉しそうミスタ

鳩おとこ – 工藤順子

毎日あの男 ベンチに体うずめて鳩達にパン屑を ばらまいていつだって御機嫌で ゆらゆら赤い顔して足下にカップ酒 転がして目は開けているのか 夢を見ているのか何が嬉

月下家族 – 工藤順子

夜に隠れてやって来る 緋色のサンダル長い裾砂色ショール靡かせて 彼女は家族に逢いに空地へ急ぐ(三毛猫 トラ猫 親猫 子猫 白 黒 シャム ペルシャ)焼跡の町駆け

トタン屋根のワルツ – 工藤順子

やけてジリジリ トタン屋根どろぼう猫 足があついよ前足上げて 後(うしろ)足けってピコン パコン ペコン今日も仕事に あぶれてはしょんぼりの 貧乏楽士おや 屋根

雨やどりの木 – 工藤順子

雨やどりの木雨が降ったらみんなあの木をめざして走る雨やどりの木雨が降ったら葉が打ち鳴らす歓びの歌翼持つ者 顔を埋め角を持つ者 飛沫落として私は言葉 忘れてしまう

幸せの猫 – 工藤順子

週末が来るたびに 彼女は華やいだ私を抱き上げて 彼を待ちながら「kis macska 世界一 素敵な仔猫」ってくしゃみが出るまで 頬ずりをする足取りは ステップ

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