岩崎宏美

春おぼろ – 岩崎宏美

桜の花は もう六分咲き
見上げることなく あなたは急ぐ
ごめんなさいね あなたの気持ち
泣きたいほどに わかるのよ

居住い正して 私を下さいと
あなたの言葉に 父は冷たく
「まだ早い」「若すぎる」たったそれだけ

怒っているでしょ 許して下さい
駅の灯がうるんでる 春おぼろ

私の気持に 変りはないの
許されないなら あの家出るわ
今夜のことで あなたの愛が
こわれることが 心配よ

電車に乗る前 私を見つめてよ
なんにも言わない そんなやさしさ
悲しいわ つれないわ 何か話して

怒っているでしょ ぶってもいいのよ
街の灯がゆれている 春おぼろ

ほんとは泣きたい あなたに抱かれて
人はみな楽しそう 春おぼろ

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