岡田しのぶ

  • 能登絶唱 – 岡田しのぶ

    袂(たもと)でかばう 頬を打つ能登半島は あられ雪負けて弱音を 吐いたなら母を泣かせた 甲斐がない愛をつらぬく 道行は波も試練の 日本海 親の目忍び 夏の旅キリコの祭り 恋路浜愛の証しに 女ゆえあの夜(よ)許した 何もかもまるで二人の 胸の炎(ひ)が燃えていたよな 海花火 間垣(まがき)を抜ける 風の音能登半島は 虎落笛(もがりぶえ)好きなあなたと 一緒なら苦労しようと 悔いはない世間隠れの 道行…

  • 娘道成寺 – 岡田しのぶ

    恋の「いろは」は 誰からも習わなくても 覚えます募る思いを 知りながら逃げる男の 憎らしさ待って 待ってください あなた娘ひとりの 道行(みちゆ)きは桜吹雪も 石つぶて越すに越せない日高川(ひだかがわ)……道成寺(どうじょうじ)初心な未通女(おぼこ)も 恋衣(こいごろも)着れば情けに 溺れます水じゃ消せない 未練火が肌の隅まで 焼き尽くす抱いて 抱いてください あなた女ごころの 滝壺(たきつぼ)に…

  • 名月浅太郎 – 岡田しのぶ

    一目見たさに 故郷に戻りゃ昔ながらの 上州月夜浮かれ囃しも 追われの身にはほんにせつない 祭り唄涙かくした 涙かくした 三度笠 思い出すなぁ…あの山も あの月もみんな昔のまんまおふくろさんは 達者でいなさるかこの川越えりゃあ あと一里なのに何でェ やけに 草鞋(わらじ)が重たくならぁ… 義理と情に ついはさまれていつか落ち目の 街道ぐらし恋のさだめも 堅気の俺も一度流れりゃ 草の露呼んでみたとて …

  • 男命 – 岡田しのぶ

    一度限りで 二度ない命風にさらすな 粗末にするな握りしめてる 拳の中の夢が湿れば 明日(あす)がない月も片割れ なぜ曇る 苦労積み石 抱かせたままで花も咲かせず 陽の目も見せず口にゃ出さぬが 入山形(いりやまがた)の絵馬を情けで 縦結びすがるその瞳(め)が ただいたい 浮世からくり 承知の上で意地の刺子(さしこ)で 火の粉をかぶる乱れ八文字 刻んだ胸に曲げちゃならない 道ひとつ俺は男で 生きて行く…

  • おもいで暮らし – 岡田しのぶ

    嘘つきあなたが ネオンに化けた追いかけた泪で にじんだ夜そっとまっ逆さま 落っこちたまま思い出地獄抱かれた胸が あったかかったくちづけられて 泣いちゃった私だけがあなたの おもいで暮らし 夜明けが見えない 西陽の部屋は狭かったベッドが 広い…寒いきっと今度こそは 最後の恋と思わせ上手俺がいるよと 言ったじゃないの俺といろよと 言ったのに私だけがあなたの おもいで暮らし あなたと暮らした 街を逃げた…

  • 命の絆 – 岡田しのぶ

    この世にひとつの 命なら誰かの支えに 生きようとあなたは心の 病葉に希望という名の 明日を見る海を渡るカモメさえ 幸せを探し遠い空の下には 涙に生きる人がいる命の絆と絆を たぐりよせ私は歌う 魂の歌よ…あなたに 離れて暮らせば 恋しくて元気な便りを 待ってますあなたにもらった 笹舟に命の絆を 知りましたあの日流した涙さえ 想い出を語る椿の花が咲く頃 も一度逢いたいあなたに命の心と心を 結び合い届い…

  • 一度でいいから – 岡田しのぶ

    おまえと呼ばれた うれしさに熱い涙を かみしめる一度でいいから やさしい胸に胸にあまえて みたいのよ逢えてよかった よかったわあなた、しっかりしっかり抱いててよ 悲しい過去なら おれもあるいまのおまえが 好きという傷つきながらも それでもあなたあなたさがして 来たわたし逢えてよかった よかったわあなた、しっかりしっかり抱いててよ あなたが灯す ひとすじの愛のともしび 消さないでふたりの明日に 小さ…

  • しぐれ海峡 – 岡田しのぶ

    逢ったときから 別れもあると思いひとすじ 尽くしたのしぐれ海峡 女がひとり世間せばめて 船に乗るあなた さよなら…わるい女よ このわたし 腕に抱かれりゃ うるおう肌のうちに海もつ このわたししぐれ海峡 想い出すてる情け重ねりゃ 罪なことあなた さよなら…赤い爪あと しみるでしょ 弱音吐いたら 心が痛むだから黙って 旅に出るしぐれ海峡 宛てない船路夢のつづきは ないけれどあなた さよなら…受けた情け…

  • お吉 恋情け -女殺油地獄より- – 岡田しのぶ

    帯をほどいて 抱いてとすがるお吉はあんたが いとおしい十年先の 思案より今や今やで 燃えつきるのは思い濡れ髪 みだれ紅 初めはほんの遊びやったのが、今はほんに夢中やがな…あんたの若さが憎らしいほどわたしを燃やす。別れたと思うたらもう逢いたい。この髪ひとすじ、甘く触れる唇もそうや。みーんなあんたのもんや、あんたのもんやで… どこのおなごに うつつをぬかすかなしいおひとの 恋灯り火をつけたのは あたし…

  • 夢契り – 岡田しのぶ

    季節(とき)は流れて 貴方も消えて心もからだも 痩せてゆきます風の便りを 追いかけて逢いに来ました 能登岬誰に思いを 話せばいいの恋しい貴方は あなたは何処に 今日も空似の 貴方の影に涙があふれて もう歩けない凍る夜空に 星もなく吹雪舞い散る 夢が散る女ひとりの 淋しい胸に恋しい貴方は あなたはいない 固い契りも 誓った夢もひと夜の恋だと 笑うのですか馬鹿な女と 云われても忘れられない 恋でしたう…

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