山本さと子

さみだれ川 – 山本さと子

みれん糸ひく 接吻(くちづけ)に
決めた別れが ぐずります
こんなにつらい… 恋なら
いっそ逢わなきゃ よかったと
沸(な)いてすがれば 泪(なみだ)うらはら
あゝ乱れさみだれ さみだれ川へ

もしもわたしが 望むなら
嘘をつづけて くれますか
死ぬよりさむい… からだを
どうか夜通し 抱きしめて
そしてひとつに とけてとかして
あゝ溺(おぼ)れさみだれ さみだれ川へ

打(ぶ)ってください おもいきり
ひとりよがりの わがままを
こんなにつらい 恋なら
この世のがれて どこまでも
熱いながれに いのち預けて
あゝ流れさみだれ さみだれ川へ

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夢桜 – 山本さと子

新妻(にいづま)きどりで あ・な・たと呼べばちょっと照れてる よこがおが好き北向きの あゝ三畳一間(ひとま)いいのあなたと 一緒ならいつか咲きます 咲かせましょ

海峡花火 – 山本さと子

波の衣を かき分けて船は港を 後にする残る私は かごの鳥飛び立つカモメが 憎らしい恋はうたかた 海峡花火からむ はじける 涙がおちる咲いて 舞い散る 海峡花火あ

北鴎 – 山本さと子

海岸伝いの 岩肌を波がからんで かけ登るまして山背の吹くたそがれは心も細る きりきりとあなた あなた そばに来て寒がる肌を 抱きにきて辛い私の 身がわりに鳴いて

哀秋花 – 山本さと子

深づめ小指を かみながら淋しさあやして のんでますあなたのいた春 いない秋人恋しぐれに ほろほろと咲いて儚ない…咲いて儚ない… 酔芙蓉(すいふよう)誰にもいえな

東京雨ん中 – 山本さと子

優しい黄昏 いつしか しずかな雨になる濡れて光る東京が 私は大好きピアスを選んで 揺らして 迷っているうちにやがて夜の指先がともす 街灯り倖せはかくれんぼ 最後

マーメイド – 山本さと子

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揺れて日本海 – 山本さと子

街を離れて この海へつらいときには ここに来るのあなたが欲しいと 甘えたくてもいつも冷たく 知らんぷり寄せては返る 波間に たたずみ遙(はる)かなる想いに 焦(

春仕度 – 山本さと子

逢いたかったと 抱きよせられてうれし涙に めざめた夜明け正夢(まさゆめ)に あゝなりますように両掌(りょうて)合わせりゃ 梅一輪紅もうれしい 紅もうれしい あゝ

花しぐれ – 山本さと子

最後の最後の 旅だからいちばん綺麗で いたいから着物にしました 想い出の秋草模様の 撫子(なでしこ)に雨が降ります… 花しぐれそれでもあなたが 好きだから出逢え

迷い橋 – 山本さと子

川面に流れる 花筏 咲いて悲しい 一年草あなた私が 見えますか 見えますかくちびるかみしめ 立ち尽くす逢える逢えない 迷い橋路地から聞こえる 風鈴の音が涙を ま

明日船 – 山本さと子

さようなら さようなら 許してあなた好きよ死ぬほど 大好きだから霧にかくれて しのび逢う愛のくらしが 苦しくて明日 明日明日という名の 出船に乗るのさようなら 

炎の川 – 山本さと子

あなただけあなただけ もうあなただけついて行かせて 次の世までもおんなに生まれた しあわせをどうぞ最初(いち)から おしえてね恋は 恋は炎(ひ)の川 燃えたつま

若狭恋唄 – 山本さと子

若狭蘇洞門(わかさそとも)のサー 潮恋鳥(しおこいどり)の啼歌(うた)が身に沁むヨー 日の暮れはあなた恋しと 乳房(むね)が哭(な)くあの日恋しと 傷が哭くあゝ

秘恋傘 – 山本さと子

枝垂(しだ)れ桜の はじらいをのぞく篝火(かがりび) 円山月夜(まるやまづきよ)待てど暮らせど 逢えない恋人(ひと)に焦(じ)れるおんなの 花乳房まるで人形… 

ぼんぼり小路 – 山本さと子

シトシトポツリと雨がぼんぼり小路を濡らすねえ疲れたでしょ傘もないのなら 寄り道していこうよきかせて胸に秘めたたとえば夢それとも恋飲みほせば一つ二つ三つ 窓を伝う

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