安藤秀樹

君の瞳の中で – 安藤秀樹

長い坂道を上った
港を見下ろす 電話ボックス
今 老夫婦が静かに
ベンチに腰をかけた

オフィスのざわめきの中で
誰かが君を呼ぶ声
黙ったまま 受話器を置く
街灯り ともり始める

気がつけば君を想っている
鳩の群れにはしゃぐ 二人は戻らない

君の瞳の中で 変われない僕がいるなら
僕はどうすればいい 置きざりの悲しみは

いくつもの涙 落ちても
君の眼は悲しい色
別の女(ひと)を知った罪は
許されぬ 胸にきざむ

気がつけば時は過ぎていた
できるならこの道 引き返したいのに

僕の瞳の中で すがれない君がいるから
一人旅に歩いて 行き先も見えぬまま

闇の月灯りも 朝の光も
今の僕には違いがわからない

君の瞳の中で 変われない僕がいるなら
僕はどうすればいい 君からは消えるだけ

君の瞳の中で 変われない僕がいるなら
僕はどうすればいい 置きざりの悲しみは

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