奈良光枝

悲しき竹笛 – 奈良光枝

一人都の たそがれに
想い悲しく 笛を吹く
ああ細くはかなき 竹笛なれど
こめし願いを 君知るや

そぞろ歩きの たわむれに
購いて分ちし 思い出よ
ああ花の笑顔も やさしく浮び
吾を泣かせる 歌のふし

雲は流れて 帰れども
鳥はねぐらに いそげども
ああ誰に明さん くちびるもゆる
今宵男の 純情を

花の都は たそがれて
まどにさみしき 銀の星
ああ想いせまりて 吹き吹くしらべ
風よつたえよ 彼の君に

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花の心も知らないで – 奈良光枝

花のこゝろも 知らないで 花びらをみんな むしりとってしまったの泣かないで 泣かないでネ私は たゞ 淋しかった だけなの花のつぼみに こっそりと 唇(くち)よせ

赤い靴のタンゴ – 奈良光枝

誰がはかせた 赤い靴よ涙知らない 乙女なのにはいた夜から 切なく芽生えた恋のこころ窓の月さえ 嘆きをさそう何故に燃えたつ 赤い靴よ君を想うて 踊るタンゴ旅ははて

白いランプの灯る道 – 奈良光枝

通い馴れた 歩き馴れた甃石道よ今宵別れの 霧が降るさよなら さようなら涙見せずに 別れましょうよ銀杏並木に 霧が降る白いランプ 灯る道を肩すり寄せて今宵かぎりの

秋草の歌 – 奈良光枝

うつくしき君 ただひとり影をうつして丸窓に読むは源氏の 須磨の巻秋雨にこぼれ散る 萩の花ああ 秋草の花のやさしさ撫子あかき 河原路水に尾をひく せきれいを染めて

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