多岐川舞子

幻海峡 – 多岐川舞子

おんな心の 真中あたり
みれん色した 海がある
おまえをきっと もらいにくると
ひとり海峡 越えたひと
待って焦れて
忍び泣きした 冬いくつ

津軽海峡 連絡船よ
どこへ消えたの あのひとと
あいつのことは きっぱり忘れ
次の倖せ 探せよと
ヒュルリ シュルシュル
潮風が頬ぶつ 北岬

卍巴(まんじともえ)と 舞いとぶ雪を
衝いて来るくる 十和田丸(とわだまる)
悲しい幻と 知りつつ闇を
涙ひきずり 追う霧笛
あなたおねがい
どうか私を 抱きにきて

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北の恋歌 – 多岐川舞子

北の港に 風花舞えばみれんゆすって 海猫が哭くさんさ時雨か 萱野の雨か…逢いたいよ あゝゝ あんたいいよ夢でも 逢いにきて遠い眸をして 唄ってくれた歌がせめての

雨のたずね人 – 多岐川舞子

雨の向こうに 灯りがともるあなたと初めて 逢った街濡れた体を お酒で温(ぬく)め交わす目と目の 紅い糸想い出しずくが そぼ降る夜はあなた恋しい あなた恋しい 雨

柳川しぐれ – 多岐川舞子

色も寂しく 花菖蒲(はなしょうぶ)女の涙を また誘う水路を廻(めぐ)る 小舟のように心があなたに 戻ります水面に浮かぶ 面影をなぜに揺らすか 柳川しぐれ胸にすが

あんたの海峡 – 多岐川舞子

男の愛が さめるから女の未練が からみつくさよならだけは 言わないで走る桟橋 連絡船は出る霧笛よ泣くな ぐずれば逢いたいあんた あんた あんたの海峡背中をなでて

ひとめぼれ – 多岐川舞子

他人が泣いてりゃ ほっとけず買った苦労で 泣かされるあんな野暮天 もう知らないよと愛想つかして 飲むお酒けどね けどね 憎たらしいけどねひと目惚れしてね…あんた

浮草の町 – 多岐川舞子

人を押しのけ 生きられなくてへたな世渡り それが好きあなたの値打ちは わたしがわかるいまに我慢の 花が咲く涙もお酒も 半分わけてそばにおいてね 浮草の町惚れてい

雪ほたる – 多岐川舞子

肩で息して とび乗る夜汽車純情たちきる ベルの音夢の灯が かすんで千切れ 遠ざかる吹雪の野づらを 遠ざかる私…… 春を待てない 雪ほたるいゝのよいゝのよ 嘘でも

あなたとふたり – 多岐川舞子

雨が背中にしみる日はあなたの心に 雨やどり尽くし足りない 私だけれどついて行く見様見真似で あなたの後を生きる 生きる 命を重ねあなたとふたり細い縁の この糸は

路地裏のれん – 多岐川舞子

あの路地右へ曲がったらいつもあなたが飲んでるお店白いのれんの向こう側今日もいるはず 会えるはず…女の意地ですと強がり言って別れたけど夜がくるたび未練がつらい何も

夢ごこち – 多岐川舞子

いいからお前も 飲めなんてどういう風の 吹きまわし片目つむって 盃返す私も一口 夢ごこち自分ばっかり もったいぶってあなたいいわね こう云うお酒止してよほろりと

津軽絶唱 – 多岐川舞子

風がうなれば 山が啼く三味線(しゃみ)はじょんから 身を焦がすこんな日暮れは 心も時化るあなた恋しと また愚図る津軽 お岩木 五所川原のぼり列車の 憎らしさ書い

天川しぐれ – 多岐川舞子

秋のなごり惜しんで 大峯山も紅葉伝いに 吉野へ続く拒むこの道 おとこ道旅のおんなの 踏めぬ道肩に冷たい 天川しぐれひとり今日も行くひと また来るひとも母公(はは

恋待酒 – 多岐川舞子

逢えない夜の なぐさめに 覚えた酒は なみだ割り あなた…あなたが 悪いのよ 悪いのよ 悲しいくらい 惚れさせて… ひとりぼっちの こころが寒い あなた待ってる

東京雨あがり – 多岐川舞子

明日(あした)を生きる みちづれにわたしがほしいと いうあなたこの命 あげましょう他人じゃない 二人今日も日暮れて あかりを灯す露地の片すみ 仮の宿なみだでよど

北の雪船 – 多岐川舞子

泣くじゃない 俺がいる抱きよせられて また涙あなたの命に つかまりながら午前零時の 北の雪船(ゆきふね)ふたりづれ…このひとと 生きてゆく覚悟をきめた 恋路です

明石海峡 – 多岐川舞子

明石海峡 今日も日が暮れてはぐれ鴎が ピヨロと啼いた俺を待つなと 言うのならなんで教えた この胸の切なさ消せない 舞子のおんな何も言わずに 二人聞いていた遠い潮

出雲雨情 – 多岐川舞子

あなたと決めた 別れ旅なのになんでこの手が 離せない出雲斐伊川(いずもひいがわ) 二人の明日はどこまで行っても 幻だからあなたお願い 引き止めないで…肩をぬらす

海峡終列車 – 多岐川舞子

風に舞い散る 粉雪がまつげで溶けて 涙をさそうつれて行ってと すがった胸に遠い海鳴り 聞くなんて…バカね未練ごごろが 凍りつく愛はまぼろし 海峡終列車ベルが急か

きさらぎの川 – 多岐川舞子

雪が哀しく 積もりもせずに冬の流れに 溶けては消える胸に刻んだ 別れ文字読めば泣けます 切なさにどこへどこへ行きつく きさらぎの川旅の日暮れは 瀬音がしみてここ

夜が泣いている – 多岐川舞子

それじゃアバヨと 口笛吹いて恋が消えてく 裏通り女やめたく なるくらいあんたに惚れて 傷ついた情なしカラスにゃ 分かるまい空ろな体に 夜風が沁みる明日(あす)が

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