夏樹陽子

雨がもえている – 夏樹陽子

あゝゝ……雨だね
雨がもえている
しとしともえている
昔がもえている
しとしともえている
おんなひとりが死んだまゝ生きて
おんなひとりが生きたまゝ死んで
時が流れて雨になったのさ
あゝゝ……雨だね
よこはまは 雨だね

黒船、ガス灯、異人さん、文明開化のよこはま村は、
それはもう、にぎわっていたものでございました。
でも……その異人さんに囲われる女には、
にぎわいも無縁のものでございました。
らしゃめん……。ひえびえとした嫌な呼び名でございます。
私のかあさんもらしゃめんで、私を生むと直ぐにみまかり…。
異人の墓にうずめられたと言う噂だけ…。
雨の匂いの様に、恨みがましく残っているのでございます。

あゝゝ……雨だね
雨が泣いている
しとしと泣いている
さだめが泣いている
しとしと泣いている
時を恨んで死んだまゝ生きて
この世恨んで生きたまゝ死んで
とけて真っ赤な雨になったのさ
あゝゝ……雨だね
よこはまは 雨だね

人気の新着歌詞

ミッド・ナイト・コール – 夏樹陽子

ミッド・ナイト・コールミッド・ナイト・コールミッド・ナイト・コールミッド・ナイト。コール別れまぎわに あなたが噛んだ右の耳たぶ 切なくうずく冷えたグラスを 頬に

おぼろ橋から – 夏樹陽子

生れも育ちも暗がりで………。いゝ思い出など一つもないって言うのに、十三か十四か………。そんな年頃のあたいが見える日もあるんですよ。フランス山は うすずみ色で行っ

熱いささやき – 夏樹陽子

しとしと雨がふる 夜なら尚のことしみじみ話すより もえてとけたい熱いためいき あなたのためなの汗ばむささやき あげるわ冷えたワインは コロンの香りねおとなの愛に

けもの雨 – 夏樹陽子

死んでもいゝんだよ雨にうたれてさ………この手をはなさずに抱きあったまゝならあんたが望みを捨てたからさあたいのいのちも捨てたっていゝあゝ なけなしのいのち雨ん中 

夢のまた夢 – 夏樹陽子

あの人は……。捕えられて……今ごろはひとにぎりの灰。あたいもいずれ、そうなるさだめ。いゝさ……どうせ人じゃない。らしゃめんじゃないか……はははは。夢を………夢を

居留地三十九番地 – 夏樹陽子

居留地はネ、書生さん、よこはまにあってもよこはまじゃないんだよ………。あたいもネ、にほんの女でも、にほんの女じゃないんだよ。あたいに恋しちゃいけないよあたいをた

風のめりけん桟橋 – 夏樹陽子

夢からさめればガス灯が花を咲かせる暗い空異人祭りにもまれて酔ってどうせ異人になれもせずらしゃめん衣装が風に鳴るひゅるる ひゅるる ひゅるるる……肌が寒いよ めり

暗い火 – 夏樹陽子

どうして………どうして身体がもえて行くの。心はつめたく冷えきっているのにさ。消してよォ………暗い暗い火だよ。もえる もえるあたいのどこかでもえる暗い暗い暗い 地

ギオロン節 – 夏樹陽子

みだれ髪くしけずる淋しい音色ギオロンのいつかおぼえた弓をひくむらさき絵の具で刷(は)いたよなおんな心でございますおんな心でございます白い胸つやぼくろ小指でなぜる

びいどろ草紙 – 夏樹陽子

異人屋敷に秋が来るひとつおぼえのメリケン節をくり返す くり返す あゝくり返す酔いざめ心地で一枚めくったびいどろ草紙に あたいが見える凍った心に 身体ひとつが身体

黄昏らしゃめん通り – 夏樹陽子

からからと からからと 馬車が行くらしゃめん らしゃめん 馬車が行くからからと からからと 馬車道に売られた女の 馬車が行くつぶて投げなよ あたいの胸に傷あとつ

よこはまメランコリー – 夏樹陽子

月日の流れはうたかたの夢。他人の夢に関(かゝ)わる事なく、人は生きて参ります。それでもこの町には今も……どこかで女のしのび泣き。本牧裏通り 灰色かもめ雨でもない

Back to top button