吉岡秀隆

吐いたツバ – 吉岡秀隆

それでも生きてゆくことが一番、一番難しいんだこの街じゃ
死ぬことを恐れて生きることができないなら死んだほうがましさ
路上でうずくまる人を見た 見て見ぬフリをする人も見た
そしてこの僕は
悲しみばかりを日常に見つけて吐いたツバを飲み込む

人の心がたとえば見えたなら最初に逃げ出してゆくのは誰
夢を大きく持ちすぎた奴らをバカと呼ぶ愚かな人間ダヌキ
あんな大人になりたくないといきがった夜は敵にまわる
振り向けば誰も一人
社会にとけ込むために奴らも吐いたツバを飲み込む

金で買える幸せなら誰でも夜通し働けば手に入るだろう
三年前の自分にあやまる 乗りたくもない満員電車の中
見えすいたウソもたてまえだけの日常に夢は金にかわる
それでもこの僕は
現実に夢を突き刺そうと吐いたツバを飲み込む

疲れきった体をだましながら 笑顔を見せて暮らしているなら
守りきれるものがきっとあるさ それがどんな結末になるとしても
強がりばかりでやり遂げもせず見えるものすべてをにらみつめてた
やがてこの僕も
大人になるために少しずつ吐いたツバを飲み込む

そしてこの僕は
悲しみばかりを日常に見つけて吐いたツバを飲み込む

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