吉備麿

おとこのグラス – 吉備麿

さだめ恨んで 流すのは
うすい泪の 氷酒
面影グラスを そっと傾けりゃ
おとこの胸に 雨が降る
独りよがりの 夢ひとつ
春に届かぬ 夢ひとつ

朝が来るのが 怖いから
明日は要らぬと 言ったやつ
面影グラスを そっと傾けりゃ
あの日のおまえ 腕のなか
夢の波間で 遠ざかる
春が彼方に 遠ざかる

雨が泪を 隠しても
酒に未練が ついてくる
面影グラスを そっと傾けりゃ
おとこの胸に 風が吹く
街の灯りが 揺れている
春をまてずに 揺れている

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