古谷一行

風のあとを – 古谷一行

まるで風のあとを追いかけるように
想い出が残る店に又
僕は来てしまった
君が左手で砂糖をいれた
砂糖はこぼれてお皿に落ちた
か細い指がそれをぬぐって
涙がひとつぶ爪にこぼれた
まるで風のあとを追いかけるように
君がいなくなった街に又
僕は来てしまった

きっと僕の事を許さないだろう
すて猫のような眼差しが
僕の胸をつきさす
君はいきなり首の鎖を
両手でちぎって僕に投げた
指輪をぬいて窓に投げた
ガラスがくだけて恋が終った
まるで風のあとをかけぬけるように
君がいなくなった春が又
街に来てしまった
街に来てしまった

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