古谷一行
絵描きの部屋 – 古谷一行
表通りの角の酒屋に
ブチの大きな犬がいる
俺の酒を買いにゆくお前は
いつもそれにおびえてた
夕日がななめに差し込む部屋で
ボンヤリ俺は昔を思う
窓を開けても半分だけしか
世間のみえないこんな暮しに
おさらばしようか
書いても売れぬキャンバスばかり
絵具の臭いがたち込めて
古い毛糸をほぐしてるお前の
名前をポツリ呼んでみる
夕日がななめに差し込む部屋の
陽やけたたみがそこだけ赤い
こうして二年かあと三年か
もうすぐ暮れゆく町の片すみ
二人は影ぼうし
表通りの角の酒屋に
ブチの大きな犬がいる
俺の酒を買いにゆくお前は
いつもそれにおびえてた
夕日がななめに差し込む部屋で
ボンヤリ俺は昔を思う
窓を開けても半分だけしか
世間のみえないこんな暮しに
おさらばしようか
書いても売れぬキャンバスばかり
絵具の臭いがたち込めて
古い毛糸をほぐしてるお前の
名前をポツリ呼んでみる
夕日がななめに差し込む部屋の
陽やけたたみがそこだけ赤い
こうして二年かあと三年か
もうすぐ暮れゆく町の片すみ
二人は影ぼうし
愛したことが 間違いだって別れは つらいものだねちぎれたままの 最後のページあなたとぼくの 物語ああ季節が変われば つらいこともやさしい顔した 昔話その時はじめ
歩道橋の下に燕が巣を作ったとお前が言ったのは朝だった俺は髭を剃りながら春だからねと言った玄関のベルがなって小さなトラックがお前の荷物を運んで行った二年ばかりの生
妹よおまえも屹度 気付いているだろうが今度の夜汽車であいつは 帰らぬ旅に出るよそんなあいつに惚れたおまえは可哀そうだけれど妹よあいつの事だけは分かって欲しいのさ
まるで風のあとを追いかけるように想い出が残る店に又僕は来てしまった君が左手で砂糖をいれた砂糖はこぼれてお皿に落ちたか細い指がそれをぬぐって涙がひとつぶ爪にこぼれ
雨の降る真夜中は想い出の揺りかごで遠い旅に出かける さすらい人のようにまるで昨日のように古い想い出が鮮かな絵となってよみ返ってくるあなたの白いうなじに揺れてる長
駅前広場は 夕暮れの中でけだるいあくびを 繰返えしているどうせ目的のない旅ささめたコーヒー のみながらなぜかおまえを 想っているよ孤独とふたりで 住み馴れた街を
お前が東京を離れる夜俺は一人で飲んだくれてるグラスにうつるお前の悲しい顔を見ながらお前のいないこの店も二人で暮したあの部屋も一年前と変らないなのに俺の心は寒かっ
この街歩けば サラサラとこぼれる 青春の砂時計昔のあだ名を 呼びながらかけてくるよ あの人の まぼろしやさしく そして ほろ苦いあの頃悲しいくらい 若かったキャ
あの頃ネ 日溜り匂うルルル 春の午後銀杏並木で君想う煙草のけむりにそよ風があの頃ネ 夕立あがったルルル 夏の暮れいつもの広場で君を待つ濡れた敷石にそよ風がやわら
幸せがお前をレディーに変えて匂うようにきれいになったな行きずりの酒場で肩をならべて逃がした月日をぼんやりたどるブラディー・マリーはおやめなさいとあの頃みたいにお
春の緑の中 君は長い髪をそよぐ風になびかせ微笑んでいて欲しい微笑んでいて欲しい夏の光る海 君は焼けた素肌をよせる波にまかせて漂っていて欲しい漂っていて欲しい秋の